スーパーマンの昔から、ヒーローにも屈折は付きものだが、それを極めた感があるのが今作の主人公だ。

正義感はあるが、自己顕示欲が強く、無謀な記者(トム・ハーディ)が主人公。曲折があって、彼に宇宙生命体が寄生する。こちらも強烈な怒りを抱えているから、かなり危うい「共生体」が誕生する。

個性的な2つの意思が微妙なバランスを保ちながら真の悪と戦うという設定は、大がかりな「寄生獣」と言ったら分かりやすい。

立ちはだかるのが、宇宙生命体を利用してビジネスをたくらむ巨大財団で、ボスにふんするのが「ローグ・ワン」(16年)で個性を光らせたリズ・アーメッド。ずる賢さを際立たせ、見事なほどに嫌な感じだ。

戦闘モードに入ったヴェノムのフォルムはヒーローとは思えない醜怪さだ。ハーディ演じる記者も、特ダネに執着して脂ぎり、生活はリアルにすさんでいる。

ピカピカの財団ボスに醜い共生体が挑む下克上の設定がこの作品の妙味だ。

数多い米マーベル・コミックのヒーローの中でも新手の存在だけに繰り出す未知の能力に新味があり、アクションシーンも存分に楽しめた。【相原斎】

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