長沢まさみが演じるとどんな役柄も憎めないものになる。「コンフィデンスマンJP」の詐欺師でも「キングダム」の山岳民族の女王でも、ずるさやたけだけしさの奥底に、持ち前の真っすぐなところをのぞかせて、愛されキャラになる。

救いようがない今回の主人公から、なぜか最後まで目が離せないのも、そんな魅力があるからだろう。

シングルマザーの秋子はゆきずりの男と関係を持ち、その場しのぎで生きている。1人息子に執着し、分身のようにそばに置いて、学校にも行かせない。息子は母親との小さな世界を守るため、流転の果てに殺人事件まで起こしてしまう。

まっとうな母性があれば、子どもをそんな目に遭わせるわけはないのだが、抑制の効いた表情やセリフの端々に不思議に愛を感じさせる。いびつだが、まぎれもない愛情表現に説得力がある。初顔合わせの大森立嗣監督とは手探りのやりとりから始まったというが、長沢マザーは生身の人間を実感させ、ダメっぷりに思わずひきつけられる。

息子役の新人、奥平大兼はみずみずしい。腐れ縁の元ホスト役、阿部サダヲが負けず劣らずのダメ男を巧演している。

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