伊藤健太郎が2年ぶりに映画に出演&阪本順治監督が伊藤をイメージし当て書きした脚本という情報以外、真っさらな状態で試写を見た。専門学校の授業に出ず不良とつるみ、定職につかず友や女から金をせびる主人公を見るうちに、伊藤が20年10月に自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕され、昨年3月に不起訴処分となった件が自然と脳裏に浮かんだ。
阪本監督は、映画会社から伊藤で映画を撮らないかと打診されて直接、伊藤から話を聞き、感じたものを脚本に反映させた。「主人公の生き方が他人とは思えなかった」と語る伊藤の芝居は確かに力がこもり、小林薫と余貴美子はじめ充実の共演陣との、ぶつかり合いも熱い。物語も人間ドラマあり衝撃の展開あり魅力的だが、虚実ないまぜとも言える作品自体に、何とも言えない違和感が残った。5月の完成披露上映会の
「健太郎君を待っている人たちの前にお連れすることが私の仕事」
という阪本監督の言葉で、なぜ違和感を覚えたのか合点がいった。自虐的とも言える役を演じた勇気は買うが…厳しい言い方をすれば“お膳立て”された舞台で映画界に出直したとも言える。俳優としてゼロに戻ったと言うならば製作、公開規模もグンと小規模なインディーズ映画で芝居1本で勝負する姿を見たかった。【村上幸将】
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