時代遅れと言われてもいい。動乱の幕末。すでに侍の時代は終わったと分かっているのに、義のため、あえて侍の生き方を貫こうとする1人の男を、「最後のサムライ」として描く。

累計発行部数398万部を超える司馬遼太郎のベストセラー小説「峠」が原作。諸藩が幕府軍と新政府軍に二分される幕末・明治維新の動乱の中、越後の小藩・長岡藩家老の河井継之助(役所広司)は、民の暮らしを守るため戦争を避けようと、どちらにも属さない武装中立を目指したが、新政府軍との談判は決裂。徳川譜代の藩として、戦うことを決断する。

気迫と覚悟。司馬が「人間の芸術品」とまで評した武士を役所が名演で見事に演じている。妻おすがを、松たか子が凜(りん)としたたたずまいで表現している。「いまこのご時勢の中、日本男児たる者がことごとく薩摩、長州の勝利者におもねり、打算にはしり、争って新時代の側につき、男子の道を忘れ、行うべきことを行わなかったらば、後の世はどうなる」

時代におもねり、勝ち馬に乗ることを潔しとしない。長いセリフが多いが、いまの時代にも通じる、心に突き刺さる名言がある。【松浦隆司】(このコラムの更新は毎週日曜日です)