第48回衆院選は22日、投開票日を迎えました。選挙期間中は注目選挙区の取材で東へ西へと走りました。中国地方の選挙区では、希望の党から出馬した新人の陣営幹部が「供託金が没収されてしまうかも…」と期待していた追い風が吹かずに、嘆き節。過去の選挙取材と比べて、今回は「供託金(きょうたくきん)」という言葉をよく耳にしました。供託金って? 取材してみました。

 総務省によると、供託金とは公選法に規定された制度です。選挙に立候補するときに法務局に供託しなければ、立候補の届け出ができません。売名や選挙妨害などを目的とした立候補者の乱立を防ぐために設けられました。

 いったい、いくらぐらい必要なのでしょうか? 衆院選の小選挙区の場合、1候補者につき300万円。比例代表と重複立候補する場合はさらに300万円が必要です。比例代表単独の場合は1候補につき600万円。けっこう高い金額です。

 それではどういった場合に没収されるのでしょうか? 衆院選小選挙区では、候補者の得票が有効投票総数の10%未満だった場合は、供託金が国に没収されます。冒頭の中国地方の希望の党から出馬した新人は当初、民進党から出馬する予定でしたが急きょ、希望の党からの立候補となりました。小池新党の追い風を期待しましたが、陣営幹部は「地方ではまったく吹かなかった。むしろ一連のドタバタで逆風が吹いた」と悲壮感を漂わせ「没収されるかも…」と話しました。この陣営は供託金に関しては民進党から一定の支援があり、たとえ没収されても金銭的に困り果てることはなさそうです。陣営幹部の没収発言の裏側には「この選挙は戦いにならない」という思いがあったかもしれません。

 もっと悲惨な状況なのは希望の党が独自に立てた新人です。ある新人は「なんとか供託金をかき集めました」。選挙戦直前まで金策に奔走したことを打ち明けました。

 この新人の場合、小選挙区の供託金300万円と、通常は党が負担する比例代表の300万を親族に頼んで借りました。さらに事務所費など選挙費用は自腹だそうです。立候補した選挙区には地盤があるわけでもなく、政党や団体の強力な支援があるわけでもありません。「供託金? 返ってくるかどうかはあまり考えないようにしています」。言葉とは裏腹に新人候補の不安そうな表情が印象に残りました。

 今回の選挙で立候補した新人は全国で630人。選挙後、供託金を巡り、うめき声が聞こえてきそうです。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)