「熱い男」を形成する材料は、「繊細」と「用意周到」だった。

 スポーツキャスターで、熱血タレントの松岡修造(50)が今月8日、大阪市内で、阪急阪神グループ「Sポイント」の記者会見に出席。取材記者が座るテーブル席まで行き、記者にも「Sポイント」の「Sポーズ」を、実質的に“強要”。果てには「僕はいつもこっち(取材)側」と言い、記者席に座って、説明を始めるなど、大暴れだった。

 持ち味の「熱さ」を存分に発揮した松岡は「僕、台本に従わないタイプ」と言い、司会の女性に「台本無視してごめんね」。松岡の登壇に先だって、カードの説明をしていた関連各社の代表者らにも「僕、大丈夫ですか?」。ただし、その言葉とは裏腹に、暴走が止まることはなかった。

 一見、やりたい放題。だが、実際には、打ち合わせの段階で、きっちりと「台本無視」を告げており、珍しい大阪での記者会見出席に、事前に「大阪の空気」をリサーチ。「声を大きく、笑っていればいい」との答えを得ていた。

 しかも、今回の仕事の依頼があった際、受けるか否か悩み、熟考していた。松岡といえば、阪急阪神グループ創始者、小林一三氏を曽祖父に持つ。その“身内”だからだ。

 関西は「自分のバックグラウンドがあるところ」ととらえており、今回の仕事は「ひいおじいちゃんが起こした会社。これを僕が引き受けていいのか、すごく悩んだ」と明かし、即諾はしなかった。

 熟考を経ての登壇。ただし、いったん引き受ければ、容赦ない。前段の“暴走”にいたったわけだ。松岡は降壇後、取材に応じ、自身を「うざい」「熱い」「本気」と評した。

 来春の宝塚歌劇団入団を目指し、宝塚音楽学校の本科生在学中の長女、恵さんからも「うざい」と言われているそうだ。松岡は「(娘に)僕が迷惑をかけないようにしないと」と話すと、豪快に笑った。

 その娘には、小林一三氏が掲げた宝塚歌劇団の理念「清く正しく美しく」に加えて、もうひとつある「朗らかに」の精神が大事だとメッセージを送った。

 もともと、松岡の持論は「どんなに辛くても笑っていろ」。笑顔でさえいれば、ネガティブな言葉で出てこないからだという。

 「人間、笑っていながら『もうダメだ』とか、言う人いないでしょ」

 確かに-。笑顔、そして「朗らかに」を説くのにも理由がある。「松岡修造」の奥深さを感じた瞬間だった。【村上久美子】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)

阪急阪神グループ「Sポイント」記者会見で「Sポーズ」を披露した松岡修造(2018年5月8日撮影)
阪急阪神グループ「Sポイント」記者会見で「Sポーズ」を披露した松岡修造(2018年5月8日撮影)