将棋の最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が広瀬章人八段(35)の挑戦を受ける、第35期竜王戦7番勝負は、藤井竜王が開幕黒星から3連勝し、初防衛に王手をかけました。今シリーズは広瀬八段が序中盤で、あまり指されていない戦型を掘り下げる「藤井対策」を徹底しています。大の阪神ファンで日本将棋連盟常務理事の井上慶太九段(58)は、広瀬八段だけではなく各棋士が序中盤の「藤井対策」を強める理由について、阪神タイガースの「JFK」を例えに、ひもときました。
戦いぶりにすごみを増している藤井竜王に対して、ほとんどの棋士が抱く思いがあるようです。「序中盤でリードを広げなければいけないという気持ちがある。藤井さんを相手に逆転勝ちというのは、ほぼほぼない」と井上九段。
かつては序中盤で時間を使い、終盤戦で時間がなくなったことで、応対を誤り、逆転負けするシーンもありました。
「経験を積まれて、決断するところは決断するところも出てきた。以前だと唯一の心配は持ち時間の切迫だった。相手と残り時間の差があり、大丈夫かな? まあ、大丈夫なことがほとんどですが(笑い)。最近は時間に余裕を持って終盤戦に迎えられている」
課題だった一局を通じてどう時間を使うのかの「タイムマネジメント」も、大舞台でのタイトル戦を重ねることで、進化しているようです。「時間に泣く」ことがなくなってくると、対戦する棋士には、これまで以上に「変化」が生まれてくるといいます。
「できれば序中盤で6-4か7-3ぐらいリードして、中、終盤戦を迎えたいという認識がすべての棋士にあるんじゃないですかね。6-4ぐらいならちょっと逃げ切れるかどうか…」
棋士心理に大きな影響を与えるのは、“無敵”とも言われる藤井竜王の終盤力です。この終盤力を井上九段は野球に例えて、こう表現します。
「7回ぐらいから強力な投手陣が控えている。昔の阪神で言うならJFK。6回ぐらいまでにリードしておかないと、相手チームは厳しい。そんなイメージがある」
JFKといえば、05年の岡田阪神の優勝を引き寄せたジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田の強力な救援トリオです。あのときの猛虎の7回以降の勝利の方程式は、将棋で言うなら相手に逆転を許さない「終盤力」とも言えるでしょう。
抜群の終盤力を見せて白星を積み重ねていく藤井竜王。これからはトップ棋士たちの「JFK対策」が、さらに強化されていきます。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




