SKE48須田亜香里(30)が、今月24日に卒業コンサート(愛知・日本ガイシホール)を行い、この秋にグループを卒業する。バレエ一筋だった18歳の少女が、「青春したい」とアイドルの世界に飛び込んで13年。1つの節目を前に「青春、できたと思います!」。そう笑顔で振り返ることができるのは、何事にも全力で前のめりに取り組んできた道程があった。【大友陽平】

★かつてはバレエ一筋

須田がバレエを始めた頃の96年4月から四半世紀以上続き1290回目を迎えた「日曜日のヒロイン」で、現役AKB48グループメンバーが登場するのは、15年12月の高橋みなみ(31)に続いて2人目。そのことを伝え聞くと「え~っ! たかみなさんと並んじゃいましたか! やった~!!」。ステージやテレビで見せる満面の笑みを浮かべ、万歳した。

全力、握手会の女王、MC、コメンテーター、NGなし…。グループアイドルとして、時には体を張るバラエティーアイドルと、さまざまな顔を持つ。その根底にあるのは、天性の負けず嫌い。記憶は4歳の頃にさかのぼる。

「4歳の時には、逆上がりも空中逆上がりもできたんですけど、隣の子ができていたので、『私にできないのはおかしい』って練習して。人ができるのに、自分ができないことがあると、気が済まないタイプでした」

祖母に姿勢が良くなると勧められ、バレエを始めたのは5歳の時。体操教室、ピアノ、水泳、書道…。絵画教室に通ったこともあるが「小学校の朝礼で、表彰される子がいるじゃないですか? あそこで名前を呼ばれたくて…。コンクールで賞ももらいましたよ(笑い)」。

小3の頃からはバレエに絞り、中学受験で大学まである学校に進学したのも、バレエに集中するため。だが、転機がやってきた。

「高1の時に、コンクールで一番いい成績を取ったんですけど、それが“1位が該当者なしの2位”。自分の限界も感じて…。自信もなかったんだと思います。別のことに挑戦したいという思いが芽生えました」

★「ダスノート」

SKE48劇場が入る名古屋の「サンシャインサカエ」は、バス通学の停車場前にあった。モニターに映し出された制服姿で踊るアイドルに、目を奪われた。

「『テレビの中にいる人と自分は何が違うんだろう?』と、子供の頃から気になっていました。ずっとバレエばかりで、部活とか、みんなで1つのことをやり遂げることもなかったので、うらやましかったんです。私も青春したいなって」

自信もあった。

「当時の私はすごくオーラがあったらしくて…(笑い)。だって地下鉄に乗ると、みんな私の方を見るんですよ!(笑い)」

ただ、その自信はすぐに打ち砕かれた。最後列からのスタート。負けず嫌いな心に火が付いた。

「どうやったら前に出られるかだけを考えていました。18歳で周りよりは大人で、嗅覚はあるので、劇場公演でどこのポジションだと早く出られるのかを見つけて勝手に覚えたり…。欲しいものがあると、力ずくでかなえにいこうとするタイプなんですよね(笑い)」

ファンと向き合うために特徴や手紙やプレゼントの内容などはノートにまとめた。今では15冊ほどになる、通称「ダスノート」。いつしか「握手会の女王」と呼ばれるようになった。

「なかなか覚えられないので、書いて覚えようと…。『やれることはやった! これで覚えられなかったらしょうがない!』って、テスト勉強と一緒(笑い)。“お守り”です」

10年の第2回から参加した選抜総選挙も、人生を大きく変えた。第2回こそ圏外も、第3回で36位にランクインすると、第5回で16位と選抜入りを果たす。

「いきなり音楽番組に出させてもらったり、景色が一気に変わりました。SKEでの立ち位置も、12番手から一気に4番手まで上がって。ミュージックビデオでも、ソロカットをいっぱい撮ってもらえて、こんなに映るんだ! って(笑い)。それまでは周りを乱すような目立ち方もして、先輩がいじってくれたから成り立っていたのですが、前に立って、初めて周りが見えるようにもなりました」

★アイドルとは“人間関係”

バラエティー番組での活躍も、選抜入りから道が開けた。13年に「関ジャニの仕分け∞」内の「柔軟女王No.1決定戦」で女王に輝くなど、個性がグループ外でも輝き始めた。15年に、1度総選挙で選抜落ちしたこともあったが「それまではキャラを演じた上でしゃべったりしていたんですけど、そこからはあまり背伸びしなくなりました」と、逆境も乗り越えていった。

天真らんまんさに加えて、時にはパンティーストッキング相撲や鼻フック、脱毛ワックスで鼻毛をごっそり抜くなど、体も張ることもいとわないが「どれも断る理由がなかっただけで(笑い)。あとは自分が楽しいからやってしまう…。みんなが笑顔になれると思った方向に私もいきたいので」と笑う姿からは、充実感すら漂う。

約13年に及んだアイドル人生も区切りが近づいてきた。「アイドルとは“人間関係”」という。

「自分! 自分! という時期もありましたけど、人として真摯(しんし)にどうやって向き合えるかが結局大事でした。私は、ファンの“皆さん”と向き合っているのではなく、“1人1人”と向き合うことを大事にしてきました。きっとこれからも、アイドルとしての経験があるからこそ、今応援してくれていたり、これからも愛してくれるであろう人のことは、一生幸せにしてあげられるように、私なりに真摯に向き合っていきたいです」

グループ卒業後、さらに活動の幅を広げる予定だ。

「今まで以上に何でもやりたいなと思っています。アイドルを卒業すれば、恋愛トークにももっと対等に参加できるのかな? と思いますし。恋愛? ほどほどに恋をする女性になりたい(笑い)。ちゃんと失敗もしたいですし、どんな人が好きなのか、相性がいいのかも分からないので…。確かめたいですね」

酸いも甘いも味わったアイドルは、明るさの裏側にいつもあったたゆまぬ努力を糧に、さらに大人になっていく。

▼映画「打姫オバカミーコ」で共演、マージャンの師匠を演じた萩原聖人(51)

僕が知ってるミーコ(須田亜香里ちゃん)は、いつも明るく元気で、みんな大好きになる! そんな存在ではあるけれど、本当はいつもいつも自分の存在と闘っていて、自分が自分でいるための努力をどんな時でもし続けられる、頑固な頑張り屋です。本人は頑張り屋と言われるのは嫌がるかもしれませんが、お芝居に対しても、マージャンに対しても、アイドルに対しても、人に対しても真っすぐに向き合えるのは、そんな彼女だからだと思ってます! SKE48を卒業して新しい道がこれから始まると思いますが、ミーコなら大丈夫! たくさんの人に愛されて今までやってきたことが、すべて花開いていくと、師匠である自分は信じてます!

◆須田亜香里(すだ・あかり)

1991年(平3)10月31日、愛知県生まれ。愛称「あかりん」「だーすー」。09年にSKE48の3期生として加入。シングル選抜27回で、20年1月に「ソーユートコあるよね?」で初センター。AKB48のシングル選抜も18回。14年からチームEリーダー。選抜総選挙は第2回(10年)から圏外→36→29→16→10→18→7→6→2位。現在、テレビ朝日「熱闘!Mリーグ」のほか、メ~テレ「ドデスカ!」、東海テレビ「スイッチ!」などでレギュラー。159センチ。血液型A。

◆「私の歩き方」

10月5日発売のSKE48最新シングル「絶対インスピレーション」Type-Aに収録の須田の卒業曲。今月24日に愛知・日本ガイシホールで卒業コンサート「君だけが瞳の中のセンター」開催。10月25日と11月1日にSKE48劇場で卒業公演予定。

卒業を控えこれからの抱負を語るSKE48須田亜香里(撮影・中島郁夫)
卒業を控えこれからの抱負を語るSKE48須田亜香里(撮影・中島郁夫)
卒業を控えこれからの抱負を語るSKE48須田亜香里(撮影・中島郁夫)
卒業を控えこれからの抱負を語るSKE48須田亜香里(撮影・中島郁夫)