昨夏退団した元花組人気スター瀬戸かずやが、4~5月に東京、大阪で、退団後初コンサート「The ALSTROEMERIA-アルストロメリア-」に臨む。構成、演出はANJU(元花組トップ安寿ミラ)。特別ゲストに、あこがれの元月組トップ真琴つばさ、新人時代に背を追った元花組トップ真飛聖の出演が決まり、「新たな瀬戸かずや」の第1歩を刻む。サンシャイン劇場(東京)は4月29日~5月1日、シアター・ドラマシティ(大阪)で5月6、7日。【取材・構成=村上久美子】

退団後の初コンサートへ思いを語った瀬戸かずや(提供写真=撮影者:吉原朱美)
退団後の初コンサートへ思いを語った瀬戸かずや(提供写真=撮影者:吉原朱美)

昨年7月に退団。同11月に花組・月組100周年公演に出演も「男役を意識した中での舞台」だった。今回は「まっさらな自分で舞台に立つ」思いが強い。

瀬戸 「宝塚の男役」しかやってこなかったので、新しい自分、新しい瀬戸かずやを構築していかなければならないタイミング。私自身「こんな自分が」「こんな表現が」というのを見つけたいですし、皆様にもお届けしたい。「ただ(素)の瀬戸かずや」が生まれる瞬間。私も楽しみです。

テーマ、鍵は「A」。

瀬戸 愛称が「あきら」なので、タイトルも「A」から始まるものを探していて、アルストロメリアというお花の名前を。いろんな色がある花。宝塚時代の懐かしい曲から、こんな姿も? という曲も。皆様と一緒にワクワクしたい。

盛り込みたいと考えた楽曲は、偶然にも、安寿と同じだったという。

瀬戸 2人で「うわーっ、同じだ」って、大騒ぎ。大興奮しまして(笑い)。どんな場面に展開するのか、楽しみのひとつです。

退団してここまで、発見した新しい自分とは-。

瀬戸 意外と私、のんびりしている人だったって、思い出しました。今まで時間がタイトで、やることもいっぱい。今は「今日、予定1件しかない」みたいな日々。それが居心地いい。そう言えば(入団前の)私って、引っ込み思案で、おしゃべりもする方ではなかった。のんびり時間が、私を思い出させてくれた。

ジムで体作りに励み、ボイストレーナーに師事。同時にゴルフも始めた。

瀬戸 体力づくりで、ジムへ通い始め、趣味にゴルフも! ピラティスと、ジャイロとかマシンを使ったエクササイズもやっているんですが、すべてがつながっているようで、とても楽しい。体幹、細かな筋肉を考えて、どこを動かす-。力を抜きながらも、必要な場所を動かす-とか。久々に、何かを突き詰める面白さを感じ始めております。

長年の男役生活で、凝り固まった筋肉をほぐし、リセット中でもある。

瀬戸 ゴルフは、周りにされている方が多く、楽しそうだなと思っていました。海が好きなんですけど、リゾート地にはほぼ必ずゴルフ場がある。どの年代の方々も楽しめるスポーツで、いつかチャレンジしたいと、ずっと思っていました。始めてみれば、指の皮がむけるほど、握りしめていました(笑い)。

凝り性な自分を再確認。

瀬戸 はい、負けず嫌いも出ますね。なぜ、これができない? と、夢中になってしまう。コースはまだまだまだ! コーチに見て頂きながら、趣味として。今まで何もなかったので。

安寿とは、100周年公演でダンスに臨んだ。

瀬戸 視界のすぐそこに安寿さんの背中があって…。必死でしたが、楽しくも光栄でもあり。忙しい気持ちでいっぱいでした。

スペシャルゲストの真琴は、自身が宝塚を目指すきっかけとなったあこがれの先輩、真飛は新人公演時代に背を追った先輩だ。

瀬戸 出演を引き受けてくださり、うれしくて光栄。真飛さんの背中を見てきましたし、卒業後も、すてきな女優さんとしてまっすぐ進んでいらっしゃる。

真琴とは、100周年公演でも共演した。

瀬戸 宝塚に入りたいと思ったきっかけの方が、真琴つばささん。今も、舞台姿を見たときの胸のときめきは…。この思いは、一生続くんだろうな。(100周年は)夢のよう。現実だから「楽しまなきゃ」という思いと、ただただ「ファンのような気持ち」のせめぎ合い(笑い)。真琴さんの男らしさと、女優として活動される中でも変わらない心温かな、包み込む大きさを感じさせていただき、「永遠に好きです」とは、お伝えいたしました。

自然な流れで、退団後の道を歩む。

瀬戸 (今後について)今、大きく何か-って、正直なところ見えていないのですが、目の前にあるこのコンサートで、新しい自分を、私も発見したいし、見たい。そういう楽しみな夢をもって、先へいきたい。

俯瞰(ふかん)的な目線は、在団中から個性のひとつ。下級生への助言も的を射ていた。

瀬戸 私自身、甘え下手でもあり、1人で脱出できない沼にはまってしまった時とか、先輩のふとした一言、読んだ書物の言葉に助けられたことが多くて。1人で考えていると、マイナスの方へいきがち。そんな経験を下級生たちに伝えたいし、回避できるならしてもらいたかった。私、目が曇っている人見つけるの、すごく得意で(笑い)。

悩みながらも、自らを理解しようと努めてきた。

瀬戸 自分を否定しちゃう時がある。こんな自分でもいい。できない自分を認め、理解し、落ち込むのではなく、どうすれば前へ進めるかを考えて。

5月には、宝塚大劇場に別れを告げて1年になる。

瀬戸 18年続けてきた宝塚を卒業する瞬間は、大事件です。無観客だったということも忘れられない。でも、悔しい思いもありましたが、それだけじゃない。上回るものを、いっぱいいただきました。今、これまで私が持っていた物差しが通用しなかったりしますが、私がどうしていきたいのか。ひとつひとつ見つけて、体験して、積み上げて、かっこいい女性になっていきたいと思います。

◆The ALSTROEMERIA -アルストロメリア- アルストロメリアの花言葉は「未来への憧れ」「凛々しさ」。構成・演出・振付はANJU(元花組トップ安寿ミラ)。

☆瀬戸(せと)かずや 12月17日、東京生まれ。04年に宝塚歌劇団入り。花組配属。「花男」一筋で、伝統的な男役を極めた。18年「蘭陵王」で女性の心を持つ高緯を演じて新境地。同年「ポーの一族」でポーツネル男爵を好演。20年「マスカレード・ホテル」で主演。花組2番手スターとして昨夏退団。身長172センチ。愛称「あきら」。