雪組公演「グランド・ミュージカル 蒼穹の昴」は、浅田次郎氏のベストセラー小説を初舞台化。兵庫・宝塚大劇場で上演中だ。清朝末期の中国・紫禁城を舞台にした一本ものは、トップ娘役朝月希和の退団公演でもある。ただのラブロマンスではなく、未来への希望を秘めた幕引きに、彩風咲奈自身「朝月のサヨナラに重なる」と言い、臨んでいる。宝塚大劇場は11月7日まで、東京宝塚劇場で11月26日~12月25日。

演出の原田諒氏によると、今作は昨年夏に、彩風就任から本拠3作目へ向けて「彩風で一本ものを」という話があり、企画。「CITY HUNTER」「夢介千両みやげ」に続く本拠地作に、原田氏は「2・5次元、コメディータッチときていたので、歴史大作を考えた」と説明した。

物語は清朝末期が舞台。科挙の試験に首席合格して改革派の俊英として鳴らす梁文秀と、彼と義兄弟の契りを交わした極貧の少年・李春児を軸に描く。春児は宦官(かんがん)となり、西太后の側近へのぼりつめ、文秀と敵対関係になる。

原田氏は、彩風を文秀に配したことに「3作目で落ち着きもある。コロナ禍で稽古が止まっても弱音をはかず、運命に立ち向かう文秀に重なった」。京劇を機に出世する春児は、人気スター朝美絢に決めた。

浅田次郎氏からは「(春児抜てきのきっかけになった)京劇の場面は外さないこと、西太后を悪人に描かないこと」だけを要求されたが、それ以外は自由に創作したという。

トップ娘役朝月は、春児の妹で、文秀を慕う玲玲役。当初、朝月の退団は決まっていなかったが、原田氏は「ただのラブロマンスではない。でも、朝月なら生きた人間像を克明に演じてくれる。ひとつの正解ではないか」と考え、進めた。

彩風も、開幕前の取材で「ただの恋仲ではない難しい関係ですが、この先2人で生きていくんだ…って、そんな終わり方が、朝月のサヨナラ公演と重なる」。最後のコンビ作であっても未来を思わせる終わり方に「ちょっと運命的なんじゃないか」とも話していた。

文秀の同志、順桂役は和希そら、文秀が仕える光緒帝は縣千。凪七瑠海、一樹千尋ら、専科からも多く出演し、芝居を締め、脇を固めている。【村上久美子】