花組トップ柚香光は、白い軍服姿から2023年をスタートさせた。1日に兵庫・宝塚大劇場で開幕した「うたかたの恋」「ENCHANTEMENT(アンシャントマン)」に主演。芝居は、オーストリア皇太子が主人公の名作に臨み、ショーはフレッド・アステアをイメージした衣装でも踊り、今年の漢字に人々をつなぐ「結(ぶ)」をあげた。コロナ禍で10~16日の上演中止が決まったが、宝塚千秋楽30日までの再開が待たれる。東京宝塚劇場は2月18日~3月19日予定。

花組トップの柚香光(撮影・加藤哉)
花組トップの柚香光(撮影・加藤哉)

軍服の皇太子、はかなくも美しい究極の愛…。宝塚の「ザ・二枚目」を描いたようなキャラクターがルドルフだ。正月に開幕も、公演関係者に新型コロナウイルス感染者が出て10日からいったん中止が決まったが、再開が待たれる。開幕前の取材で、ルドルフへの熱い思いを語っていた。

「あ! 大劇場でうたかたの恋! 最初聞いた時は、皆さんと同じ感覚で(笑い)。この令和の時代にという驚き、そして、大階段のプロローグあるのかな? とワクワクしました」

故柴田侑宏氏の脚本で83年の初演から40年。再演が重ねられる「うたかたの恋」は、本拠地作としては93年星組以来、30年ぶりとなった。柚香にとっては14年「エリザベート」以来、9年ぶりのルドルフになる。

「9年! あの頃はそもそも、軍服を着る第1歩からでした。でも当時もルドルフという人に、すごく魅力を感じていました。皇太子という立場は、生まれたときから運命、背負うものが決まっていて…」

9年前と同じ書籍「『うたかたの恋』の真実」をもとに、撮影に臨んだ。過去の上演作は映像で確認。「とくに(麻実れい主演の)初演で学ばせてもらいました」と言い、ルドルフ像を固めた。今作で潤色・演出の小柳奈穂子氏とも確認しあったという。

「(前回と今回)自分の中では、皇太子ルドルフは1人。軍服ってすごく、体のラインを軍人として見せるのが難しい。少しも気を抜けない。(上演)1時間30分は、軍人としての筋肉の使い方が必須条件かなと思っています。そこに筋肉はなくても、あるように体を使わなきゃいけないと」

軍服の着こなし、こだわりも譲らない。今回のデザインはシンプル。その分「皇族の方が普段着てらっしゃるような、肌なじみのいいと言いますか。『はあ~』って、はまりこむようなデザイン。皇太子になるんだという実感を持ちました」。衣装の力も借り、「皇太子、育ちの良さ」を肝にルドルフ像を練ってきた。

「圧倒的な教育、制約の中で日常を過ごす人の立ち居振る舞いを、徹底的に作り上げる必要があると感じていました。彼がどれだけ憔悴(しょうすい)、泥酔しようとも、一般人とは全く違う。筋肉のつき方や癖から“皇太子”が抜けることはないので」

「究極のルドルフ」を求め続けるのも、柚香らしさ。ショーでも調香師にふんして、世界に魔法をかけるという展開で、柚香ならではの作品になっている。

「プロローグからロマンチックで、華やかで清潔感がある。(大好きな)フレッド・アステア風のハットとスーツで、マリリン・モンロー風の星風まどかと、ニューヨークの街で出会う場面は小粋で抜け感や遊び心もあって、踊っていても(この場面に)出合えて良かった~って(笑い)」

運動量・難易度とも高い振り付けの場面にも「体を目いっぱい使って踊るようなナンバーは『ずっと踊っていたい』と思うぐらい。体がすごく喜んでいるのを感じます」と笑う。

2023年の抱負を語る花組トップの柚香光(撮影・加藤哉)
2023年の抱負を語る花組トップの柚香光(撮影・加藤哉)

昨年は「多くの人に支えられ、導いていただき、多くのことを教えられた1年だった。すべての経験を大切に、1歩1歩、歩んでいきたい」と感じた1年だった。そして、今年、2023年への思いには-。

「舞台にささげます。それだけに尽きます。新しい出会い、作品、役とのご縁も、お客さまとのご縁も、ひとつひとつ、その時その時を、1日1日大事に過ごしていきたい」

新年の思いを漢字で求めれば「結」と返ってきた。

「結ぶ、です。作品と自分、役と自分、スタッフの皆さまと自分、お客さまと自分の縁を結んで、それをより強固に、温かいものにしていきたい。ありがたいご縁とご縁を、結ばせていただけることに、感謝の心をもって。はい、結んでいきたいなと思います」

“結ぶ”年の第1歩を踏み出した。【村上久美子】

■ショーは香りがテーマ

ショーは名前にちなみ、香りがテーマ。好きな香水もキャリアを重ねて変化した。「かつてはスッキリ系が好きだったんですけど、最近は甘いのも。バニラ風なども好きになりましたね」。稽古場には演出の野口幸作氏が、サンプルで香水を持ってきていたといい「いい香りをかいだだけで、気分が高揚したり、懐かしい気持ちになったり、旅行した気分になったり…」。香りの持つ力も取り入れ、つとめている。

◆ミュージカル・ロマン「うたかたの恋」(脚本=柴田侑宏、潤色・演出=小柳奈穂子) クロード・アネの小説「マイヤーリンク」をもとに、19世紀、オーストリア皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーの悲恋を描き、83年に初演。以来、宝塚歌劇の名作のひとつとして再演が重ねられ、初演40周年となる今年、大劇場作としては、30年ぶりの上演になる。

◆タカラヅカ・スペクタキュラー「ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水(パルファン)-」(作・演出=野口幸作) 「アンシャントマン」とは“魔法にかかる”などを意味するフランス語。調香師レイが魔法の香水を振りかけ、始まるレビュー。

☆柚香光(ゆずか・れい)3月5日、東京都生まれ。09年入団。花組配属。14年新人公演初主演。同6月宝塚バウホール初主演。15年台湾公演でオスカル。17年「はいからさんが通る」で外部初主演。19年東京で「花より男子」主演。同11月に花組トップに就き、華優希とコンビ。21年夏、2人目相手娘役に星風まどかを迎え、昨年は「TOP HAT」にも主演。身長171センチ。愛称「れい」。

◆おことわり 公演日程については変更の可能性があります。最新情報は、宝塚歌劇団の公式ホームページなどで確認ください。