宙組トップ真風涼帆と同時退団するトップ娘役、潤花は、あらためて真風への感謝の思いを強くする日々だ。真風との退団公演「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」は、兵庫・宝塚大劇場で17日に本拠地千秋楽を迎える。残り5日、カウントダウンに入った。東京宝塚劇場は5月6日~6月11日。東京千秋楽をもって退団する。

退団公演への思いを語った宙組トップ娘役潤花
退団公演への思いを語った宙組トップ娘役潤花

退団公演にも、稽古中から「最後の公演という実感はあまりなくて」と話していた潤。自身の心情よりも、ジェームズ・ボンドにふんした真風を見て、退団を実感していたという。

「お稽古の段階で、皆の熱量が、いつも以上に、ゆりかさん(真風)に集まっていて、今回が最後の公演なんだな、と…」

イアン・フレミングの「007/カジノ・ロワイヤル」をもとに、小池修一郎氏が脚本・演出を手がけた一本物。潤はオリジナルで、ロマノフ家の末裔(まつえい)ながら、学生運動に身を投じるデルフィーヌ役に臨んでいる。

「がむしゃらに、一生懸命に、行動に移していく女性。芯があり(役を)生きていてとても気持ちいい。すてきだなと思える女性」

自身との共通点には「思ったらすぐ言葉にするところ」と笑い、集中すると周囲が見えなくなる点もあげた。その傾向は、トップ娘役に就いてからも自覚。真風から「ただただ頑張っても(視野が)狭くなっちゃうよ」と指摘されてきた。

「(真風は)最後だから-とかではなく、いつも時間があればお話ししてくださる。今回も、ゆりかさんから『世界を変えたい、正義感の強い女性ではあるけれども、正当化しすぎなくてもいいんじゃないかな』と言っていただいて、道が開けたといいいますか」

21年2月、真風の2人目相手娘役に迎えられた。学年差はあったが「ともに作品をつくる上で、人として、私にそのままぶつかってきてほしい」と言われた。思い出は「語りきるのどうしようってぐらい」多いといい、感謝は尽きない。

その真風が宝塚最後で挑むボンド像には、稽古場の時点で、心動かされた。

「いや、もうですね! 椅子からひっくり返るほどすてき。お稽古で、振り付けの途中の時点から、おかしいほどすてきで…ほんとに! 原作のボンド・ファンの方も、きっと、真風涼帆さんボンドのファンになられるんじゃないか。宝塚をご存じない方も、ボンドに見えるのではないかって」

稽古場では振り付けがつくたび、お芝居が進むたび、“真風ボンド”に後輩らがわき上がったという。

「長椅子(で見学)の下級生から声があがり、拍手がわきあがって。毎公演そうなんですけど、今回はとくに、すごかったです」

セリフひとつ、歌を披露しても、ハットや銃の扱いも…。「ひとつひとつ、どのしぐさも“ゆりかさんボンド”。すべてのファンの方が、たくさんの大好きポイントを見つけられるんじゃないか」とも語る。

トップスターとしても、人生の先輩としても、敬服する真風と、添い遂げて退くと決めていた。

「この世界に入らないと出会わなかった方々じゃないですか。人との出会い、その奇跡には、毎日、幸せを感じています」

父母ら、家族が宝塚入りを勧め、受験し、合格。16年に入団し、雪組をへて宙組へ移った。宙組で、真風から相手娘役に迎えられた。まだ新人公演学年を終えた8年目に入ったばかりだが、揺らぐ思いはなかった。

「父と母が、家族が、宝塚の道を-と言ってくれたところから。なんという道しるべなのか。この時代に、宝塚に入らないと出会わなかった。人との出会いの奇跡。それを今、一番感じますね」

運命、道しるべに沿って歩んできた。退団後の芸能活動については「今は目の前のことに、とても必死です。(最後の作品に)最後まで、心して挑んでいきたいという思いでいっぱい」と言い、全身全霊を傾けるだけだ。【村上久美子】

■次期トップ娘役は春乃さくら

次期トップ娘役春乃さくらは、潤と同期の102期生。宝塚音楽学校の予科時代から仲が良く「似てると言われ、間違えられていたんです」と笑う。雪組から組替えで宙組へ来て「また一緒になれたね」と喜び合った仲。「(次期が)決まった時は、春乃よりも騒いで、すぐ電話しました」。次期トップ芹香斗亜への向き合いには「私はゆりかさん(真風)と、心のままに向き合って幸せなので、春乃もそんな時間を過ごせたらいいねと言いました」と話した。

◆アクション・ロマネスク「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」(原作/イアン・フレミング「007/カジノ・ロワイヤル」白石朗訳、創元推理文庫刊 脚本・演出=小池修一郎) 小説をもとにしたオリジナルのストーリー。1968年、米ソ冷戦の最中、パリでは反体制デモが起きていた。過激派は地下組織「赤軍同盟」に吸収。ジェームズ・ボンドに、ル・シッフルと呼ばれるソ連のスパイを倒すよう指令が出る。資金を使い込んだル・シッフルは、カジノで一獲千金を狙う。ボンドは、ギャンブルの腕を生かして彼の資金源を断とうと闘う。

潤花は、同時退団がかなうトップ真風涼帆への感謝の思いを語った
潤花は、同時退団がかなうトップ真風涼帆への感謝の思いを語った

☆潤花(じゅん・はな) 9月19日、北海道旭川市生まれ。16年入団。雪組配属。研2で「ひかりふる路」(17年)新人公演初ヒロイン。19年「PR×PRince」で宝塚バウホール、「ハリウッド・ゴシップ」で東上初ヒロイン。20年9月宙組へ移り、21年2月22日付で同組トップ娘役。真風の2人目相手娘役として本拠地4作。身長165センチ、愛称「じゅんはな」。