月組トップスター龍真咲が、大先輩・涼風真世の代表作に挑んでいる。92年、涼風が妖精にふんしたミュージカル「PUCK」に主演する。龍もほぼすべてのセリフを暗記するほど、一目置く作品だ。ショー「CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-」と2本立てで、兵庫・宝塚大劇場は11月3日まで。東京宝塚劇場は同21日~12月27日。

 特徴あるつぶらな瞳をキラキラ輝かせた。

 「この1年、女も男も、妖精も演じる(笑い)。充実している1年だって、思えるようになるんじゃないかと思います」

 12年6月のトップ就任から本拠地5作目。今年は1月に梅田芸術劇場公演「風と共に去りぬ」でスカーレット、4月の100周年記念行事中に本拠地で公演し、今回が涼風のはまり役だった妖精役。笑顔が充実の日々を物語る。

 「PUCKは(入団前の)ファンのときから大好きな作品で、映像のない実況CDで何度も聴いていました。老若男女が楽しめて、夢があって、子どものころの気持ちを思い出させてくれるファンタジーがある」

 同作は小池修一郎氏の作、演出。シェークスピア「真夏の夜の夢」をモチーフに、人間に恋をした妖精が愛を得て、人間になるまでを描いたコミカルな幻想劇。92年に涼風主演で初演。当時、小池氏は涼風ら出演者をイメージして書いた、22年ぶりの再演だ。

 「実況CDはずっと聴いていたので、セリフは全部言えます。誰か(他の役者)がつまったら(代わりに)言えちゃいます。それぐらい好きで覚えています」

 舞台上で組の仲間がセリフを忘れても大丈夫。妖精の龍が“天の声”としてフォローするという。まさに“魔法使い”になるかも?

 「そうですね。あははは。ファンなんだと思います、本当に。ファンです」

 大先輩のはまり役だけに、重圧も大きいはずだ。

 「この作品に携われる喜びが大きくて(重圧は)ないです。衣装あわせの段階から、うれしすぎて、劇団中を走り回りました。PUCKだよ~って。けいこ中の組子に見せに行きました」

 いたずら好きなPUCKそのままの無邪気さ。初演同様、舞台にローラースケートでも登場する。

 「ローラースケートはしたことがなかったんですけど、意外と大丈夫。けいこでは、こけて(転んで)学ぼうと思っていたんですけど。人にぶつかられて1回こけただけでした」

 涼風から当時の台本も見せてもらい、助言も得た。

 「その場にあなたがその気持ちでいたら、あなたは妖精であり、PUCKであるんだよ、とおっしゃられて。最終的にそこにたどり着けたらと思っています」

 節目100年を前にここ数年、本拠地作の合間にツアー、他劇場公演が相次ぎ、自炊の良さも痛感した。

 「食欲も落ちるので、しっかり食べようと、最近は全然しなかった自炊をするように。野菜も肉もお魚も、とれますし。でも(本拠地けいこ中の)今は無理」

 自炊を始めたきっかけは「ドリア用のお皿をもらって、作ってみようって…」。そう言って笑った素顔は、好奇心旺盛な妖精に通じる。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「PUCK(パック)」(作・演出=小池修一郎氏) シェークスピア「真夏の夜の夢」がモチーフ。妖精PUCKが人間に恋をし、愛を得ようと奔走。人間になるまでを描く。喜劇的で、幻想的なミュージカル。92年、涼風真世主演で上演。松任谷由実による主題歌「ミッドサマー・イヴ」も話題に。

 ◆ショー・ファンタジー「CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-」(作・演出=中村暁氏) コンセプトは「ショーはイメージの結晶」。ダンスを中心としたエネルギッシュな作品。龍とトップ娘役愛希れいかが、しっとり系デュエットも。

 ☆龍真咲(りゅう・まさき)12月18日、大阪府生まれ。城星学園を経て、01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。07年1月「パリの空よりも高く」で新人公演初主演。12年6月、月組トップに就き「ロミオとジュリエット」で、お披露目。今年1月、梅田芸術劇場公演「風と共に去りぬ」で、轟悠のレット・バトラーを相手にスカーレット役。3~4月、本拠地で「宝塚をどり」「明日への指針 -センチュリー号の航海日誌-」「TAKARAZUKA 花詩集100!!」の3本立て。身長171センチ。愛称「まさお」。