舞台演出。先日、日刊スポーツの紙面にも取り上げてもらったが、舞台「政見放送」(2月17日~20日、東京・伝承ホール)で演出を担当していた。とある地方都市の町長選の討論番組を舞台に、担当ディレクター目線で候補者たちの虚像と実像を描く物語。主演は第1回コラムにも取り上げた馬場良馬、その他、元AKB48の島崎遥香に、若手俳優の木津つばさ、さらには藤田朋子にダンカンと旬なキャストとベテラン陣が組み合わさった豪華な座組。約3週間の稽古を経て、4日間7回の公演は無事に終幕した。
舞台演出自体は3度目、これまでは知り合いのキャストや初舞台のメンバーが多く、見よう見まねでしのいできたところに今回のガチなメンバー。恒例のサッカーで例えると、アマチュアでの指導のみの監督がいきなりJ1の監督になるようなもの。公演パンフレットにもコメントを寄せたが、なぜうまくいくと思ったのか? 企画した自分が恨めしい(笑い)。
舞台と映画。演出するということにおいては同じ役割だが、今回改めて似て非なるものだと感じた。一般的に、舞台は俳優のもの、映画は監督のものと言われる。最後にお客さんに届ける際に一番近いのは誰か? の解釈でいいと思う。舞台であれば稽古した後、お客さんと相対するのは俳優、映画であれば、撮影後に仕上げがあるので監督。さらに深掘りすると、舞台は物語に合わせて進行していくが、映画は順撮り(時間軸に合わせて撮影)することはほぼなく、さまざまなシーンを効率よく撮っていく。
そして演出に関しては、映画の場合はもちろんプランはあるものの、押さえとしてさまざまな表情を要求することがある。いきなり全体を把握できるものでもなく、このパターンもありだなと思えばそれも現場でしてもらう。邪道かもしれないが、よりよい作品になるのであればそれはそれでよいと理解してきた。
対して舞台は、少しでもブレた演出をすると俳優陣から容赦なく指摘を受ける。俳優の立場で考えてみると、それはそうだなと。明確な演出プランがないと広い舞台上でどこに動いていいのかがわからない。結果、俳優に対するアプロ-チは、映画と舞台ではまるで違ったものになる。
前置きが長くなったがさて本題。今回紹介するのは、その舞台「政見放送」に出演してくれた北代高士(35)。番長のあだ名で知られ、昨年ヒットしたBL(ボーイズラブ)映画「性の劇薬」では主人公をいじめ抜く謎の男を熱演、さらにビデオ専用映画にも多数出演し、主演も務めている。人気2・5次元ミュージカル「テニスの王子様」出身だが、BLにVシネにと、かなり異例なキャリアである。
舞台の顔合わせ前に何本か作品を鑑賞した印象としては、まず怖い(笑い)。高身長の上、ガタイも良く、色黒でドスの効いた関西弁、Vシネなどで重宝される理由もわかる。いろいろと合わさった結果、芝居にダメ出ししようものならキレられそうと勝手な想像をしてみたが、本人はいたって好青年。地元が近い(大阪・茨木市と京都・長岡京市)こともあり、(気を使ってくれていることも含めて)非常にノリが合った。 それは登校初日で空回りしている転校生に手を差し伸べる姿に似ていて、番長のあだ名にふさわしいと感じた。BLにVシネに優しい番長と、その振り幅がさらなるブレークにつながるであろう。今後の活躍に期待です。
◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。2月17日からは東京・渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールで演出舞台「政見放送」が上演された。





