72時間の生放送「72時間ホンネテレビ」(Abema TV)のフィナーレ企画「72曲ホンネライブ」をやり切った元SMAPの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が語った言葉です。3日間にわたる生放送のラスト。3人とも「ボロボロ」と肩で息をしながらも「気持ちよかった」「やっぱり楽しい」と生き生き。やはりこの人たちは、ステージで歌って踊り、ファンにキャーキャー言われているのがよく似合うと実感しました。

 ずっと踏ん張ってきた彼らが、最後にあんなに泣いたのも印象的。目の前にファンがいて、変わらず応援してくれる姿をその目で見て、張り詰めていたものが一気にほどけたように見えました。「みんなの応援を原動力に進んでいく」という決意と表情はいかにもフレッシュ。やる気と不安が交錯する新人のような初々しさもあって、思わず、西武園でのデビューイベント(91年)の面影が重なりました。

 あの日は台風直撃の土砂降り。それでも熱烈に応援してくれたファンの姿に勇気を得て、晴れ晴れと第1歩を踏み出した時の表情と同じでした。ずぶぬれの写真を見ると、稲垣、草なぎ、香取の3人が真ん中で肩を組んで笑っていて、偶然とはいえ感慨深いものがあります。

 今では考えられませんが、イベント後のデビュー会見は質問が出ないまま終わるというほろ苦い体験もしています。台風のせいで進行が遅れに遅れ、会見が新聞各社の締め切りギリギリになった事情からでした(ネガを本社で現像する時代です)。彼らも分かってはいるものの、デビュー会見という晴れ舞台が手応えなく終わって傷ついたはず。心細そうな表情は今も忘れられませんが、みんなで不安を乗り越えようとする姿もあの時のままでした。

 それにしても、72曲の選曲はカラフル。40代の彼らが「好きな曲、元気をもらった曲」として選んだのは、80年代、90年代が中心。1曲目の「学園天国」(小泉今日子)から71曲目の「雨あがりの夜空に」(RCサクセション)まで、ど真ん中世代には歌詞カードがなくても歌えるストレートなセレクトでした。個人的には「ピンクスパイダー」(hide with Spread Beaver)、「時の過ぎゆくままに」(沢田研二)、「青空」(THE BLUE HEARTS)あたりにわくわく。あらゆる曲の歌詞に意味を込めているような選曲でした。

 SMAPとして歌謡史にあれだけのヒット曲を刻みながら「僕らは曲がない。アーティストの皆さんの曲をお借りして」(香取)という現実をきちんと割り切ってみせたのもなかなか。確かに声がかすれたり音を外したりと「ボロボロ」な場面も多々ありましたが、それもライブの臨場感。ファンの前でパフォーマンスするという原点でみるみる表情が輝くのを見て、「自分のDNAが覚えている」(草なぎ)という発言も納得でした。何はともあれ、72時間お疲れさまでした。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)