25日に行われたプロ野球ドラフト会議で、大阪桐蔭・根尾昂内野手の交渉権を引き当てた中日の新監督、与田剛氏の喜びの言葉です。日本ハム、巨人、ヤクルトとの競合で、くじを引き当てた瞬間ガッツポーズしました。

89年のドラフト会議で中日から1位指名を受けた与田さんを取材し、思いやりあふれる人柄が印象に残っているので、あれから29年、新監督として大役を果たした晴れ姿をわくわくと見ました。

89年のドラフトは、野茂英雄の8球団指名という歴史的な年。与田さんの会見は、所属するNTT東京(当時)の埼玉県のグラウンド施設で行われました。新人記者だわ畑違いだわで勝手が分からず、他紙の野球担当記者に混ざって広めのスペースで原稿を書いていたのですが、気がつくと残っているのは私を含めて2人だけ。ゆっくり荷物をまとめて帰ろうかと思ったら、離れた場所に与田さんが数人の球団関係者と座って談笑していました。

「終わりました?」と与田さんに聞かれてびっくり。なんでいるのですかと聞くと「ここは閉めるので」。ずっと使っていていい場所だと思っていたので、こちらは大慌て。「声を掛けてくれれば」と恐縮して荷物をまとめると「だって、原稿書いているから」と、笑顔で気遣ってくれました。

当時の与田さんは家族の意向で在京球団を希望しており、それ以外の球団からの指名は丁寧に断っていました。会見でも、中日の1位指名に複雑な胸の内を語っています。デリケートな状況下だったにもかかわらず、人に自然に配慮できる優しさと胆力の持ち主なんですよね。最後はなんとなく全員で玄関を出て、帰り道まで教えてくれました。今ほど取材対象者のガードがきつくない時代の話とはいえ、ニュートラルな人柄は今でもくっきりと記憶に残ります。

あの日のドラフトで、中日与田の原点を目撃している者としては、新監督という立場で再びドラフトの場にいる姿は感動的でした。根尾選手の交渉権を見事引き当て「スーパースターのような選手なので、これからの野球界を背負ってほしい。いろんな形で活躍をしてほしい」。うれしそうな顔に胸がいっぱいです。与田監督、交渉権獲得おめでとうございます。大いにプロ野球を盛り上げてください。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)

1巡目で大阪桐蔭・根尾昴の交渉権を獲得した中日与田剛監督は、記者の質問に笑顔で答える(撮影・たえ見朱実)
1巡目で大阪桐蔭・根尾昴の交渉権を獲得した中日与田剛監督は、記者の質問に笑顔で答える(撮影・たえ見朱実)