TOKIO長瀬智也(41)が来年3月いっぱいでジャニーズ事務所を退所し、グループから脱退することになった。民放から次々と歌番組が消え、“アイドル冬の時代”といわれた90年代前半(94年)にCDデビュー。ジャニーズでも数少ないバンド形式を貫き、気がつけば活動歴26年のトップバンドになっていた。デビュー当時の宣材パンフレットを読み返し、バンド愛で歴史をこじ開けてきた年月がしのばれた。

   ◇   ◇   ◇

表紙に「TOKIO DEBUT」の文字と公式写真が華々しいパンフレットは8ページつづり。芸能界イコール音楽界だった当時、デビューする歌手はフルカラーの厚紙でこの手のプロフィル冊子を作って取材記者に配りまくるのが一般的だった。5人のメンバーに1枚ずつページを割く作りに“大型デビュー”ぶりがうかがえる。アナログ時代の宣材も、写真の5人の若さも、いろいろ懐かしい。

ページを開けると、ファーストクレジットは長瀬智也。生年月日、出身地、身長体重などの定番プロフィルのほか、長所「大胆不敵なところ」、短所「優柔不断なところ」とある。松岡昌宏は、長所「明るいところ」、短所「うるさいこと」。今も全然変わっていない感じにほっこりする。

バンドや音楽に関してもそれぞれがアンケート形式で答えていて、音楽の好みが少しずつ違っているのも興味深い。好きなアーティストは、ディープ・パープル(長瀬)、エルビス・プレスリー(松岡)、エリック・クラプトン(国分太一)、ラフィン・ノーズ(山口達也)、ジミ・ヘンドリックス(城島茂)という具合。そんな彼らが、ジャニー喜多川氏が打ち出した「90年代のグループ・サウンズ風」というコンセプトで一丸となった。この冊子がPRしているデビュー曲「LOVE YOU ONLY」は、そんなグループの世界観が詰まった名曲だと思う。

まだバンド形式でのパフォーマンスではないころの握手会イベントなども取材したが、当時からバンドデビューを目標に「いつかは東京ドームでやりたい」と話していた。CDデビューより前にドラマで売れ始めた時も、「俳優業と両立してみせるからもっと練習時間がほしい」と事務所に訴えていたほど、バンド一筋だった。

男闘呼組という先輩バンドはあるものの、ジャニーズといえばやはり歌って踊るスタイルが王道であり、バンドで成功するのだろうかと思われていたのも事実。冊子では、そのあたりにも触れている。「何を言われてもいいです。それでもバンドをやりたいです」。あらためて、この時の思いを実践し続けた26年なのだと感じた。

長瀬の脱退は、方向性についてメンバー同士で深く話し合いをした結果で、松岡によれば「円満離婚」とのこと。彼らが決めたなら、それがベストなのだと思う。TOKIOサウンドが音楽史に残した功績をかみしめながら、彼らが選んだ今後に期待したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)