1月スタートの冬ドラマが出そろった。満点なしのさみしい後味で終わった秋ドラマから一変し、ここ数年でも快作豊富。警察もの、医療、お仕事コメディー、ホームドラマ、ゾンビパニックなどさまざまなジャンルが見応えを競っている。「勝手にドラマ評」45弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(深夜枠、シリーズものは除く)。

 ◇   ◇   ◇

ドラマプレミア10「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(C)テレビ東京
ドラマプレミア10「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(C)テレビ東京

◆「アノニマス 警視庁“指殺人“対策室」(テレビ東京、月曜10時)香取慎吾/関水渚

★★★☆☆

ネットの書き込みで人を死に追い込む「指殺人」対策部署。ここ数年「フェイクニュース」や「デジタル・タトゥー」などこの問題の社会派ドラマが分厚かったので、目障りなライバルをSNSで攻撃、という1話は少々ありきたりに感じた。決定的証拠がガラスに映っていたという定番や、スマホから行動履歴が分かる一般常識などスキル古め。「強い人間なんていない。人は誰でもこの指1本で傷ついてしまう」という主人公の信念と、SNSで人を陥れた者がSNSで同じ報いを受ける結末は引き込まれた。先輩刑事に「んもう~嫌い! ぷんっ」。新人女子を優等生の空回りキャラで描く古いテンプレは、もう法律で禁じてほしい。

連続ドラマ「青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-」(C)フジテレビ
連続ドラマ「青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-」(C)フジテレビ

◆「青のSP-学校内警察・嶋田隆平-」(フジテレビ、火曜9時)藤原竜也/真木よう子

★★★★☆

学校内警察官、嶋田隆平の学園荒療治。「教育しに来たわけじゃない」ので、何かあれば生徒でも即手錠、即連行。教員の限界を公権力であっさり超え、容赦なく開けた風穴から人の心をつかんでいく過程が痛快。いい感じに浮いている藤原竜也が主人公の立ち位置に合い、しれっと盗聴、しれっとGPS、しれっと警察人脈。観察力に裏付けられた主人公の馬力が激アツで、次の一手に興味が沸く。裏アカの正体や集団ドラッグなど各話の構成もいい。やっているのは教師改革でもあり、結末からもうひとひねりある人間の本性も刺さる。精神論でしゃしゃり出る優等生教師に真木よう子。「まだずーごさいでつよ!」みたいな滑舌は苦しい。

火曜ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(C)TBS
火曜ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(C)TBS

◆「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS、火曜10時)上白石萌音/菜々緒/玉森裕太

★★★★☆

上京娘がファッション雑誌の鬼編集長の雑用係に。「プラダを着た悪魔」を火曜ドラマ風にカジュアルにし、上白石萌音と菜々緒で安定。返事が大きい、奮発したスーツを大事に着回す、ムカついても行列には並ぶなど、ちょっとした描写にヒロインの本質がにじんで応援しがいがある。けん玉で商談ゲット、みたいなふざけた話がきちんと脚本として起承転結していて、涙とガッツの成長物語がすがすがしい。君臨する菜々緒の美が華やかな世界のシビアさをくっきりと表現し、1話の土下座もかっこよかった。3話で演出が急に幼稚に。恋愛パートでテンポが止まるので、あれもこれもとバットを短く持たず、お仕事ドラマで大きく振ってみては。

水曜ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(C)NTV
水曜ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(C)NTV

◆「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ、水曜10時)菅野美穂/浜辺美波

★★★☆☆

恋愛小説家である母親の久々の恋と、おたくな娘の初めての恋。2つがリンクしないまま、整体師、イケメン大学生、編集者、たい焼き屋さんなど多すぎる場面が無秩序に渋滞し、1話はかなり混乱した。娘サイドのズレた恋模様がみずみずしくてすてきなので、「恋愛小説を書けなくなった母親のため、おたくな娘が一念発起で恋をする」という、トモダチ親子のスパルタ恋愛コメディーの方でシンプルに見たかった。チャラチャラにやけた岡田健史がすごい仕上がり。若い2人のスカスカな会話の妙を永遠に見ていたい。書けない菅野美穂のカラ元気な悔し涙は名場面。ジャニス・イアンの「ウィルユーダンス」がいい選曲。

テレビ朝日系ドラマ「にじいろカルテ」リモート交流会を行った、左から井浦新、高畑充希、北村匠海
テレビ朝日系ドラマ「にじいろカルテ」リモート交流会を行った、左から井浦新、高畑充希、北村匠海

◆「にじいろカルテ」(テレビ朝日、木曜9時)高畑充希/北村匠海/井浦新

★★☆☆☆

病のため東京の大病院を辞め、過疎の村にやってきた女性医師と村人の交流。「Dr.コトー診療所」かと思ったら、「過保護のカホコ」がお医者さんになったような方向性。メルヘンな停留所のネーミング、お菓子の家みたいな診療所、ハイジみたいな屋根裏部屋、童話みたいなシェア生活、妖精さんたちが住んでいそうな森、とんがり帽の村人たち、子どものお歌のサプライズ、色えんぴつで「きずな」「仲間」…。絵本のような世界観は好みが分かれそう。コロナの最前線で医療従事者がギリギリの奮闘を繰り広げる今、泣き虫な守られキャラで医療をメルヘンに描くのは、個人的には違和感がある。

木曜劇場「知ってるワイフ」(C)フジテレビ
木曜劇場「知ってるワイフ」(C)フジテレビ

◆「知ってるワイフ」(フジテレビ、木曜10時)大倉忠義/広瀬アリス

★★★★★

結婚5年。ヒステリックに変貌した妻にうんざりな夫が、タイムリープで出会う前に戻って人生をやり直す。あの日を変えて現代に戻ると、妻だった澪(ミオ)は職場のただの同僚に。知らなかった魅力に触れ、再び恋に落ちた時はもう遅いというすれ違いがロジカルに描かれ、SFラブストーリーならではの切なさがキラキラとある。「いくら人生を変えても、必ず引き合い、目の前に現れる」というパラレルワールドの仕掛けがうまく、中だるみさせない韓流原作の安定感。自分はどんな夫だったのか。主人公の反省と成長を通し、幸せは自分次第というメッセージが胸に落ちる。大倉と広瀬アリスがちゃんと夫婦に見えることが、物語の説得力に。

金曜ドラマ「俺の家の話」(C)TBS
金曜ドラマ「俺の家の話」(C)TBS

◆「俺の家の話」(TBS、金曜10時)長瀬智也/戸田恵梨香/西田敏行

★★★★☆

家業を捨ててプロレスラーになった男が25年ぶりに帰宅。人間国宝の父親を介護しながら能楽「観山流」継承者を目指す。長くタッグを組んできた長瀬智也に宮藤官九郎が最高のホームドラマを書いたという印象で、ピークを過ぎて「長男」と「家業」を背負い込んだ40男の挑戦を長瀬がハートフルに立ち上げている。介護や認知症などの描写もユーモアにあふれ、能書き先行の時代に「そういうもんだから」の折り合い方が強い。西田敏行のペーソスと、江口のりこ、永山絢斗でコメディー盤石。ヘルパー戸田恵梨香、芸養子の桐谷健太という血縁のない身内の配置も素晴らしい。「俺の家の話」を聞きながら、「うちの家の話」をふと考える。

◆「レッドアイズ 監視捜査班」(日本テレビ、土曜10時)亀梨和也/松下奈緒

★★★☆☆

監視カメラの科学捜査。ファーストシーンは女性のメッタ刺し、主人公は敵討ちに燃える敏腕刑事、配属先は新設ユニット、リーダーは女性。唐沢寿明の「ボイス(耳)」が「アイズ(目)」になっただけだが、30代の亀梨和也で画角が若返り、シシド・カフカのアクション、趣里の知性などかっこいい女性陣も配置し、チームものとしてだいぶ見やすくなった。テッド・バンディ、ゾディアック事件など実在のシリアルキラーに関連づけた切り口への工夫はあるだけに、恐怖の演出の古さが残念。この枠は女性を監禁し、なぶり倒してひたすら悲鳴の安上がりに頼りがち。恐怖こそ独創性を。

オトナの土ドラ「その女、ジルバ」(C)フジテレビ
オトナの土ドラ「その女、ジルバ」(C)フジテレビ

◆「その女、ジルバ」(フジテレビ、土曜11時40分)池脇千鶴/草笛光子

★★★★★

今期イチオシ。物流倉庫で夢も男もやる気もないまま40歳を迎えた主人公が、「ホステス募集40歳以上」のバーとの出会いで人生が変わっていく。歴戦の高齢ホステス(草笛光子、中田喜子、久本雅美)のオーラと、殺伐とした倉庫側の40代(江口のりこ、真飛聖)。ヒロイン池脇千鶴が行き来する2つの世界の対比が最高の配役で描かれ、今は亡き“ジルバママ”のイズムで友情が芽生えていく過程にぼろ泣き。「踊って、転んだらまた笑って、そんな人生よ」。過酷な人生にカラッと折り合う高齢熟女のかっこよさがかつての銀河テレビ小説を思わせ、戦後の見せ方もうまい。池脇千鶴が山村紅葉みたいな激変ぶりで体当たり。それに値する役。

TBSドラマ「天国と地獄」制作発表会見を終え、阿佐ケ谷神明宮でヒット祈願を行った左から柄本佑、綾瀬はるか、高橋一生、北村一輝(2021年1月10日)
TBSドラマ「天国と地獄」制作発表会見を終え、阿佐ケ谷神明宮でヒット祈願を行った左から柄本佑、綾瀬はるか、高橋一生、北村一輝(2021年1月10日)

◆「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS、日曜9時)綾瀬はるか/高橋一生

★★★★☆

女性刑事と、サイコパス殺人鬼の心と体が入れ替わるSFサスペンス。相手の協力がなければこの姿のまま捕まってしまう女性刑事と、この姿を借りて何かをたくらむサイコパスの皮肉な一蓮托生(いちれんたくしょう)。ダークとコメディーのバランスがよく、2話は女性刑事の災難を高橋一生がずば抜けの女性回路で演じて爆笑した。現在主導権はサイコパス側にあるが、別の入れ替わりを匂わせる描写や、ただの居候なわけがない柄本佑など、「刑事VS容疑者」の初期設定がどう変化していくのか楽しみ。伝承やオカルトをうまく盛り込んだ独創的なストーリーは圧巻のひと言だが、こんな人になりたいというキャラクターの魅力でドラマを楽しみたい派なのであえて4。

ドラマ「君と世界が終わる日に」のリモート会見後、ゾンビに挟まれ記念撮影をする左から飯豊まりえ、滝藤賢一、竹内涼真、中条あやみ、笠松将、キム・ジェヒョン(2021年1月5日)
ドラマ「君と世界が終わる日に」のリモート会見後、ゾンビに挟まれ記念撮影をする左から飯豊まりえ、滝藤賢一、竹内涼真、中条あやみ、笠松将、キム・ジェヒョン(2021年1月5日)

◆「君と世界が終わる日に」(日本テレビ、日曜10時半)竹内涼真/中条あやみ

★★★☆☆

ゾンビ映画は感染症パニックものでもあるので、感染=死、隔離、ワクチンなど、このご時世に好みが分かれそう。生存者の人物構成や、最初に外に出たやつがまず死ぬ、肝心な時に女性が転ぶ、たどり着いた避難所が敵の巣など、ゾンビ映画のお約束とB級感はちゃんとある。主人公が弓の名手という、まんまウオーキング・デッドで、「すいませんっ」とゾンビの額に命中させる竹内涼真の極限状態がオツ。大型ロケでロングショットが広々とあるのは新鮮で、中条あやみのキュートさもホラーに合う。対立キャラがいとばん頼りになる人間関係の皮肉や、人間の争いと信頼という裏テーマをどこまで描けるか。日本のゾンビが足めっちゃ速くて笑える。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)