Snow Man主演で、今年がラスト公演となる舞台「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」(新橋演舞場)を見てきた。

満開の桜吹雪から始まる和のエンターテインメントは今年も大迫力で、歌、ダンス、アクロバット、芝居など、ジャニーズ演劇のスキルを詰め込んだこの演目のすごみをあらためて感じた。滝沢秀明氏からタスキを引き継いで5年。この演目で育ったSnow Manがしっかり幕を引いてくれることにもドラマを感じる。※報道済みの範囲内でネタバレあり。

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東京の桜はもう散ってしまったが、滝沢歌舞伎ZEROはオープニングから桜一色。「春のおどりは、よ~いやさー」のかけ声とともに150万枚の花びらがドサーッとステージに落ちて舞い上がり、名物“ドカ桜”の花吹雪の中、9人で「ひらりと桜」を華やかに歌って踊った。ステージから舞い上がった花びらは客席にも降り注ぎ、ここでしか見られない光景で劇場をひとつにしてくれる。

ファイナルとなる今年は、滝沢歌舞伎の歴代パフォーマンスを凝縮した構成。前半は、アイドル衣装で歌って踊るお家芸のほか、剣劇、変面、今や目玉演目となった「腹筋太鼓」など。後半は、滝沢歌舞伎の見せ場であるステージ上での“生化粧”からの歌舞伎や、9トンの水が降り注ぐ中でのずぶぬれパフォーマンスなどが盛り込まれた。

約2時間の快刀乱麻を目に焼き付けながら実感したのは、滝沢氏がいかにメンバー9人の個性、持ち味を知り尽くして演目を伝承してきたかということ。そして、必死に食らいついて持ち味を開花させてきたメンバーたちの道のりだ。

とんでもないダンスの才能を買われて1曲まるまるソロで踊る場を与えられたラウールは、毎回生き生きと自分のダンスを表現し、Snow Manのファン以外にもダンサー、ラウールを印象付けたと思う。喜劇の中でこつこつとクールな敵役に徹してきた目黒蓮は、昨年「silent」で俳優として大ブレークした。「鼠小僧」の人気キャラ、お丸ちゃんを演じる深澤辰哉とか、もはや出てくるだけで面白いという境地にいつの間にか達しているパターンもあったりして、「滝沢歌舞伎」のステージがカラフルな個性を成長させてきたことは間違いないと思う。

終演後、外に出ると、劇場前にはSnow Manファンの女の子たちがたくさんいて、客出しのため全開となった扉から見えるロビー飾りを写真に撮ろうとスマホを向けていた。

今でこそ珍しくない光景だが、タッキーが「滝沢演舞城」のタイトルで始めた06年の初演当時は、演舞場といえば中高年女性の観劇の場。若い女性がどっと来るのは、それ自体がニュースになるほど珍しいことだった。当時24歳。演舞場最年少座長(当時)とジャニー喜多川氏の挑戦がいかに斬新だったかが分かる。

タッキーのタレント業引退にともない、19年版からSnow Manが「滝沢歌舞伎ZERO」として看板を引き継いで5年になる。

初年は客席から見てもとにかく必死という印象。翌20年はコロナ禍で公演中止という悔しい思いをしたが、映画化という「映像」の視点から作品に向き合った経験は大きかったと思う。21年版は、舞台でパフォーマンスできる幸せと意気込みを全身にみなぎらせて堂々と大きく見え、恒例の“ドカ桜”を医療従事者への感謝を込めた青にするなど独自色も発揮。滝沢歌舞伎ブランドは、完全にSnow Manに継承されたのだと感じた。

滝沢氏は昨年10月末に電撃退社したが、メンバーたちの強い思いから、今回のファイナルが決まったという。思えばあれが最後だった、みたいな、取り返しのつかない終わり方も珍しくない業界だけに、この作品で育ったSnow Manがきちんとファイナルとして興行を打ち、きっちり幕を引いてくれることになってよかった。千秋楽まで、完全燃焼をお祈りしております。

東京・新橋演舞場で30日まで。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

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