7月期の民放夏ドラマが出そろった。在宅率が低く「夏に勝負作なし」が定説だった夏ドラマだが、今期は7年ぶりに本格ラブストーリーを投入したフジテレビ月9や、2カ月のモンゴルロケを敢行したTBS日曜劇場「VIVANT」の大スケールなど勝負作がそろった印象だ。「勝手にドラマ評」55弾。今回も単なるドラマおたくの立場からあれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。
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◆「真夏のシンデレラ」(フジテレビ系、月曜9時)森七菜/間宮祥太朗
★★☆☆☆
夏だ海だ恋だ! みたいな若い物語を期待していたので、毒親に圧迫された男女のデリケートな恋が3話でもまったく進まないのはさすがにつらい。ピッチピチに若い森七菜の夏の露出と、この猛暑にずっと長袖の間宮祥太朗。同じ湘南の夏を共有しているように見えず、演者同士の“ケミ”がさっぱり立ち上がらない。頭ぽんぽん、回し飲み間接キス、よろけてハグ、白馬の王子さま願望など、古いお手本もキャラクターに合っていない感。溺れている人にキスしてあっさりベッドイン、という節操のないサブカップルの方がツッコミどころ満載でおもしろい。ラブストーリーらしく、もっと効果的に音楽がほしい。
◆「転職の魔王様」(フジテレビ系、月曜10時)成田凌/小芝風花
★★★☆☆
「何か勘違いしてませんか」「女性の転職限界年齢は30歳」。無愛想で容赦ない転職エージェントの荒療治を成田凌がいい格調で立ち上げているだけに、もっと魔王感強めでも良いのでは。ノイジーな脇役陣のおふざけシーンが多すぎて、魔王様の刺激が寸断される。パワハラ上司や派遣社員軽視などの描写が類型的なのは、安心設計で見やすいような、パンチ不足のような。1話は転職に臆病な小芝風花がおばのエージェントにコネ入社し、魔王の相棒ポジションで自分探し。転職活動の苦労をあっさり特例で超えてくるスタートに面食らう。縁の下の奮闘が報われた早見あかりの2話はいい余韻だった。
◆「18/40~ふたりなら夢も恋も~」(TBS系、火曜10時)福原遥/深田恭子
★★☆☆☆
18歳で妊娠が判明した女子大生と、婦人科系疾患で妊娠しづらいと判明した40歳キャリア女子が同居して幸せ探し。仕事も恋も子どもも「全部あきらめない」という道のりを見守りたかったが、それぞれの新しい恋人も、夢だった会社への就職も、偶然連発のご都合主義で1話で全部手に入り、出産以外の話がほぼ終わってしまった。シスターフッドものは中森明菜×安田成美みたいな“異種”の交流がセオリーだが、本作はシュガーパウダー系女子の競演で、画面がパステルで固定。「二十五、二十一」とか「19/20」とか、韓国ドラマに寄せたタイトルのちゃっかり感。
◆「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系、水曜10時)赤楚衛二/生田絵梨花/波瑠
★★☆☆☆
10年間カノジョがいない33歳会社員の「恋がしたい」奮闘記。1話の冒頭から「君を守るよ」という地雷ワードが飛び出して、女性視聴者をふるいにかける大胆なスタート。男女の思い込みのズレをテーマにした“恋愛まちがい探し”のジャンルだが、そこからですかという男性目線の古典に毎回もやもや感が残るので、失敗連発で悩める向井くんを「ドンマイ」「かわいい」と育成ゲーム感覚で愛せるかどうかで評価が分かれそう。各話のマドンナ役が肉食系ばかりでハードル高い。「してあげよっか」と道ばたで合意もなくキスしてくる小悪魔女子のくだり。逆ならただの性犯罪で、やはりもやもやする。
◆「ばらかもん」(フジテレビ系、水曜10時)杉野遥亮/宮崎莉里沙
★★★★★
挫折した若き書道家が、五島列島での暮らしの中で再起の糸口をつかんでいく。手際の悪い1話が悔やまれるが、たくましい島の子どもたちとの交流が動き出した2話からキラキラした夏の物語が展開中。「チャンスは下に落ちている」という餅まきの極意など、丁寧に描かれる島の生活がさりげないドラマの種となり、主人公の成長がきちんとある。初めて入ったかまど焚きの風呂。外で火の番をしてくれた田中みな実との、顔が見えない本音の会話もいいシーンだった。芸術家の衝動が動き始めた3話の「鯛」の字が泣かせる。五島の美しい風景への敬意を上乗せして5。
◆「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系、木曜9時)中村倫也/川口春奈
★★★★★
山間の集落、ハヤブサ地区を舞台にした連続放火事件の謎に、都会から移住してきた若き作家が挑む。人間関係の濃さという、毒にも薬にもなる田舎コミュニティーの陰陽が令和版横溝正史みたいなサスペンス感で展開していて、美しい夏の風景とのコントラストも不穏で素晴らしい。消防団入りして村の魅力を知っていく主人公のまっすぐな人柄と、謎に対して独自の視点を持つ作家の本能を中村倫也が絶妙なよそ者感で立ち上げていて、小さな波紋のその先がダイナミック。銀行が出てこない池井戸潤ミステリーの醍醐味(だいごみ)を、日曜劇場みたいにあおらないテレ朝制作陣が生き生きと形にしている。
◆「トリリオンゲーム」(TBS系、金曜10時)目黒蓮/佐野勇斗/今田美桜
★★★☆☆
ハッタリ上等な戦略担当ハル(目黒蓮)と、パソコンおたくのガク(佐野勇斗)が1兆ドルを目指す起業もの。サクセスストーリーというより、ギラついた成り上がりストーリーの方向性なので、目黒蓮がどこまでネジをぶっ飛ばしてハルの言動に迫れるかがカギ。1兆ドルの物語にしてはあれこれチープだが、コスプレドラマの要素もあり、主演俳優のファン層に向けたカジュアル路線として安定。荒唐無稽な起業ロジックより、ハルとガクの友情物語、お金ファンタジーとして親近感がある。2話で元気娘のリンリン(福本莉子)が合流し、事業の方向性が一気に分かりやすくなった。
◆「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系、土曜10時)松岡茉優/芦田愛菜
★★★★★
1年前の始業式にタイムスリップした教師が、教え子の自殺や転校など、この先起こる未来を全力で変えていく。生徒へのこびだった「何でもやります」の意味が、2度目の人生で激変。盗聴盗撮、共犯、家庭への鬼介入など本当に「何でもやる」松岡茉優先生が最高にやばく、正面突破、逆転の発想など生徒の救い方が目からうろこ。1話芦田愛菜、2話山時聡真など各話のメイン生徒が本当にうまく、作品の志をすごい熱量で見せてくれる。3話の「ちゃんとハブってください」という優等生の土下座は、この脚本の妙味そのものだったと思う。本気の人たちが作る学園ドラマは最高。クラス30人全員のキャスティングにその本気が表れている。
◆「VIVANT」(TBS系、日曜9時)堺雅人/阿部寛/二階堂ふみ/松坂桃李/役所広司
★★★★☆
誤送金した1億ドルを回収するため、商社マンが中央アジアへ。2カ月のモンゴルロケで大スケールの映像、広々とした物語が展開していて、世界水準への執念はうれしい。2話までは、乃木を守る公安阿部寛VSバルカ警察のバトルで、乃木は巻き込まれているのみ。誤送金事件の真相が動き始めないと何とも言えず、東京に戻った3話以降はスパイドラマ要素が動き出し、乃木の第2の人格がどこで覚醒し、どう物語を支配していくかに期待。女性キャラが軽率な勘違いだの遭難だのと足の引っ張り役で悲しい。韓国ドラマの女性像から10年古く、こういうところこそ世界水準を希望。
◆「CODE-願いの代償-」(日本テレビ系、日曜10時半)坂口健太郎/染谷将太
★★★☆☆
台湾ドラマのリメーク。何でも願いがかなうアプリ「CODE」が引き起こす犯罪の連鎖。願いがかなうたびに謎の任務が来て、失敗すると死の制裁という地獄作りがうまく、恋人の死の真相を知りたくてアプリをインストールした刑事(坂口健太郎)が“任務”という名の犯罪に手を染めていく葛藤にスリルがある。黒幕は手を汚さず、末端プレーヤーが殺人ノルマを背負って働く構図はオレオレ詐欺の問題にも通じる。「シグナル」(韓国)ではトランシーバー、今作ではアプリ。キーアイテム捜査で坂口健太郎は盤石。人間VSアプリの知恵比べの先に、戻れない主人公が何を見つけるか見届けたい。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)












