2026年NHK大河ドラマに、仲野太賀さん主演の「豊臣兄弟!」が決まり、同局から発表されました。

昭和の大河黄金期から戦国ものの傑作をいくつも見てきた者としては、「秀吉」(96年)以来30年ぶりという豊臣のセンターに、今から心躍ります。

豊臣秀吉の天下統一を支えた弟、豊臣秀長を主人公に、豊臣のサクセスストーリーを描くという視点も面白そうですよね。豊臣の快進撃を支えた人物であり、兄の天下統一を見届けて病に倒れるというドラマ性も抜群。「秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は続いていたかも」と、いつまでも戦国ファンに惜しまれ続ける最強2番手のひとりです。

制作統括の松川博敬プロデューサーは、「史上まれにみる痛快サクセスストーリーというのが『太閤記』なので、そこをもう1回、兄弟のきずなでやったら、より少年漫画みたいに面白いのではないか」。兄弟で成り上がっていく感じが、いかにも馬力が増していいですよね。「秀吉の裏で秀長が努力したんだろうと想像する。手柄は実は二人なんじゃないかと」という言葉にも同感です。

秀長の死後、兄の暴走が始まり、豊臣が没落していくわけですが、松川氏によると、物語は「秀長が亡くなるところがゴール」。つまり、農家に生まれた兄弟が天下を駆け上がっていくという、豊臣の青春時代みたいな生き生きとしたところが凝縮して描かれることになります。あっと驚く戦術、たたき上げのコミュニケーション術など、この兄弟でしか描けない“何でもあり感”は、窮屈な今の時代に痛快なヒントを与えてくれるとも感じます。

秀吉を陽性で描くというのもうれしいところです。

竹中直人さんの「秀吉」を最後に、長く脇役で描かれてきたゆえ、おのずと悪役テイストや、陰気な方向性で“今までにない秀吉”像が模索されてきました。おかげでさまざまな秀吉と出会うことができましたが、個人的には“悪役秀吉”は「黄金の日日」(78年)の緒形拳さんの怖さを超えるものはないと思っているので(死に方も怖すぎます)、そろそろ直球の秀吉像を見てみたいという期待もありました。

自身も秀吉ファンという松川氏は「ひょっとすると、今の若い子たちって、原点の秀吉を知らないんじゃないかと」。脚本の八津弘幸氏も「最近の秀吉って、腹にいちもつ抱えたサイコパスみたいなイメージですが、今回はもっとカラッとしていて天然」とプランを語り、「そういうお兄さんに好き勝手なこと言われて、弟が必死に実現していくという、お兄ちゃんのことが大好きという秀長を描きたい」としています。

個人的に、大河の主人公は走るキャラであってほしいので、泥臭さが絵になるな仲野太賀さんは最高のキャスティング。「いだてん~東京オリムピック噺~」(19年)の走るシーンも胸アツだっただけに、ぜひ「獅子の時代」(80年)の菅原文太さんを超えるような疾走感をお願いしたいところです。タイトルの「!」の通り、画面からはみ出るような勢いのある大河を期待しています。2年後ですけど。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

豊臣秀吉の弟秀長を演じる主演の仲野太賀(左)と握手する脚本を担当する八津弘幸(撮影・丹羽敏通)
豊臣秀吉の弟秀長を演じる主演の仲野太賀(左)と握手する脚本を担当する八津弘幸(撮影・丹羽敏通)