天皇陛下が詠んだ詞に皇后さまが曲を付けた「歌声の響」が11月6日、CDブック(朝日新聞出版)として発売される。両陛下が80歳の傘寿を超えたことを機に宮内庁の協力で制作された。ソプラノ歌手の鮫島有美子(63)が歌い、東京芸大音楽部長の澤和樹氏がバイオリンを担当。人間国宝の西江喜春氏が三線(さんしん)で参加した。

 この歌には40年前、皇太子ご夫妻時代の両陛下が沖縄を初訪問した時の思いが込められている。沖縄・名護市にあるハンセン病療養所を訪れた両陛下は、入所者の感謝の気持ちがこもった船出歌にじっと聞き入った。

 天皇陛下が沖縄に伝わる「琉歌(りゅうか)」でこのときの思いを詠んだのが「歌声の響」。8・8・8・6の音数律を持つ定型詩で「だんじょかれよしの歌声の響 見送る笑顔目にど残る」。「だんじょかれよし」は感謝の船出歌のことで、そのときの人々の笑顔を懐かしむ思いが込められている。

 この歌を贈られた施設では沖縄民謡に乗せて歌われていたが、「曲」を望む声もあった。これに応え、皇后さまが友人の作曲家・山本直純氏の協力を得て曲を付けた。天皇陛下も新たに2番の詞を詠み、施設で歌い継がれてきた。CDでは情感のこもったソプラノが荘厳な旋律に乗っている。

 欧州での活動が長い鮫島は「歌い込むほどにわき上がる不思議な力を感じました。世界を見回しても王室が自らお作りになった前例はありません。唯一無二の歌です。両陛下の思い、沖縄のこと…広く知っていただきたい」という。

 ベルリンの壁崩壊1周年の90年大みそかに、鮫島が現地からNHK紅白歌合戦に出演した経緯もある。戦後70年の節目となる今年、年末の紅白にふさわしい歌かもしれない。【相原斎】