一昨年1月に亡くなった歌手やしきたかじんさん(享年64)の妻、家鋪さくらさんが名誉を傷つけられたとして、たかじんさんの元弟子、打越元久氏に損害賠償を求めた裁判の控訴審は28日、大阪高裁で結審し、言い渡し期日は7月14日に決まった。

 ただし、裁判所は同時に和解の提案も行い、公判後に別室で両者代理人と協議。言い渡し期日とは別途、5月20日に和解協議を設けるとし、その日まで和解の道を探ることになった。

 同裁判では、昨年10月28日、大阪地裁が打越氏の発言でさくらさんの名誉を傷つけたとし、300万円の支払いを命じており、和解成立なら300万円より少ない金額になるとみられる。

 裁判は、さくらさん側が、ネットラジオ番組で打越氏の発言によって名誉を傷つけられたとして、慰謝料1000万円を求めて民事提訴。大阪地裁が、打越氏に300万円の支払いを命じる判決を下し、打越氏側が控訴していた。

 今年2月から控訴審が始まり、この日が3回目。これまで、打越氏側が、発言のもとになった作家百田尚樹氏の「殉愛」や、同書への反論メッセージになる「『殉愛』の真実」のコピー、週刊誌報道などの証拠を提出していた。

 さくらさん側代理人は「もともと、控訴側(打越氏側)が和解に積極的ではないので、こちらとしては和解の意向があるなら(300万円以下の金額でも)交渉に応じる」と話した。

 一方、打越氏側代理人は「和解できるかどうかの確認が裁判所からあった。こちらとしては、あくまでも打越氏の発言が名誉毀損(きそん)に当たらないとの主張は変えない」と言い、争う構え。発言にいたった背景に、世の中に出ている刊行物があると訴えてきているだけに、言い渡しを待つ基本方針があるようだ。

 ただし、裁判所から和解協議を持ちかけられたことで、今後、地裁判決が破棄され“逆転勝訴”にいたる可能性は低くなったとみられることから「時間があるので考える」と話した。