70年代後半から80年代にかけ、娯楽映画の代名詞だった「角川映画」が一挙に上映される。30日から東京・角川シネマ新宿で「角川映画祭」が開催され、76年「犬神家の一族」を皮切りに48本が上映される。

 11本でカメラマンを務めた仙元誠三氏(77)は「熱気があった。時間もぜいたくに使った。アクシデントも迫力ある映像につながった」と振り返る。81年の興収1位となった「セーラー服と機関銃」の銃撃シーンはヒロイン薬師丸ひろ子(52)がほおに傷を負う事故があったが、流血シーンはそのまま作品に使われた。「恒さん(渡瀬恒彦=共演)をはじめ、みんな真っ青になって心配したけど、相米(慎二監督)はカットをかけないし、『しめた』と思った。相米と僕だけはすごい絵(映像)が撮れたと興奮していたんだね。やだね映画屋は(笑い)。もちろん、ひろ子のことは心配で、すぐに病院に運んだんですけどね」と明かす。

 現在では当たり前となった公開初日の舞台あいさつや、原作本や商品とのタイアップキャンペーンも角川映画が草分け。当時の映画興行は文字通り角川映画を中心に回っていた。

 「犬神家-」と翌77年「人間の証明」がともにその年の興収2位。78年「野性の証明」「セーラー服-」と84年「里見八犬伝」がそれぞれ興収1位となるなど、角川映画は12年間にわたって映画界をリードした。

【相原斎】

 ◆角川映画祭 30日から9月2日まで。48本のうち「犬神家の一族」「セーラー服と機関銃」「人間の証明」「Wの悲劇」「汚れた英雄」「蘇える金狼」などの人気作は初めてデジタル化されて上映される。