1月に表面化した解散騒動の責任を取り、SMAPのプロデュースを手掛けてきた女性マネジメント室長I氏は同月、退社の意向を示した。現場の混乱を避けるためSMAPの仕事現場から姿を消した。

 当時、SMAPが個人やグループで出演するテレビやラジオの番組は計22本。ドラマ、映画、CM、イベントも加えるとさらに膨大で多岐にわたった。長年SMAPの仕事を取り仕切り、全てを知り尽くすI氏の不在は想像以上の事態を引き起こした。

 2、3月は公式ファンクラブの会報や更新手続きの通知が遅延。I氏との強い信頼関係で契約が成り立っていたスポンサーは今後を話す相手がおらず、困惑した。新規で仕事を依頼しようにも「窓口はI氏」とされたそれまでの常識が通用せず「誰と話をしていいのか」と戸惑う関係者も多かった。毎年のように出演した稲垣吾郎(42)の舞台企画も白紙のまま。新規の仕事が決まりにくい状態が続いた。

 SMAPは事務所内では別格扱いで、仕事が決まるまでの流れやプロデュース方針はI氏だけが掌握していた。仕事依頼が届くと直接メンバーと話し合い、即断即決もあり得た。プロデュースを引き継いだ事務所スタッフは、現場マネジャーと1つ1つ話し合いながら、事務所幹部が最終確認した上で決めていく形をとるしかなく、どうしても時間や手間がかかる。I氏が担ってきたメンバーとのコミュニケーションも、スムーズな形で引き継ぐことができなかった。

 メンバーも、よき理解者で相談相手だったI氏の不在は大きかった。特に依存度の高かった稲垣、草なぎ剛(42)香取慎吾(39)の3人は孤立感を抱えるようになったとみられ、仕事に対する積極的な提案もしなくなった。

 周囲もグループ内の不協和音と、事務所側との微妙な関係を感じ取っていた。グループ唯一のレギュラー番組、フジテレビ系「SMAP×SMAP」の関係者は外部の業界関係者に対して「(メンバーと事務所の契約更新時期にあたる)9月以降は番組に何が起きるか分からないから、大物ゲストのブッキングは控えてほしい」と内々に伝えていた。

 1月の解散騒動、そしてI氏の不在によって狂い始めた現場の歯車。解散発表までの半年間、SMAPは先の見えないグループとして毎日を過ごしていた。

 ※なぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀