名作として有名なドラマ「ザ・ガードマン」などで知られる、俳優の神山繁(こうやま・しげる)さんが、今月3日に肺炎のため京都府内の自宅で死去していたことが16日、発表された。87歳だった。遺作は14年度下半期のNHK連続テレビ小説「マッサン」だった。故人の遺志で葬儀は行わない。

 神山さんは昨年2月から肺炎のため1カ月半入院。退院後は京都の自宅で療養を続けていた。関係者によると、今年の元日には元気に新年のあいさつを受けていたが、その後に容体が急変。92年に再婚した喜久夫人にみとられて息を引き取ったという。生きていれば88歳の誕生日だった16日に、その死が発表された。「葬式無用、戒名不要」という神山さんの美学から、葬儀・告別式は行われない。

 神山さんは広島県呉市で生まれ、海軍経理学校を経て進駐軍の通訳などを務め、1952年(昭27)に文学座入団。演出助手を務めた後、俳優に転じた。63年に芥川比呂志、小池朝雄、仲谷昇、岸田今日子らと脱退して、現代演劇協会の劇団雲を結成。75年には芥川らと演劇集団円の創設に参加した。

 シェークスピア劇で活躍したほか、テレビドラマ、映画でも活躍。65年から71年にかけて放送された警備会社を舞台とした、最高視聴率が40%を超えたTBS系人気連続ドラマ「ザ・ガードマン」に出演。主演の宇津井健演じるキャップこと、高倉隊長の警視庁時代からの盟友の榊隊員を演じた。

 映画では岡本喜八監督「日本のいちばん長い日」(67年)や山本薩夫監督「華麗なる一族」(74年)などの演技で高い評価を得た。映画「ブラック・レイン」(89年)では英語力を買われ、高倉健演じる刑事の上司の警察幹部役で出演した。

 晩年まで精力的に活動を続け、映画「踊る大捜査線」シリーズや北野武監督の「アウトレイジ ビヨンド」(12年)などに出演。遺作となったNHK朝ドラ「マッサン」(14年9月~15年3月)では、玉山鉄二が演じた主人公の故郷の寺の和尚を演じた。

 重厚な演技で、現代劇でも時代劇でも、エリート高官でも悪役でも、常に作品に重みを与えられる俳優だった。また、サントリーウイスキーのCMにも長く出演してお茶の間に親しまれた。

 ◆神山繁(こうやま・しげる)1929年(昭4)1月16日、広島県呉市生まれ。東京で育ち海軍経理学校に入学。53年に映画「にごりえ」に出演。63年劇団雲、75年演劇集団円を結成し、91年に円を退団。96年NHK「官僚たちの夏」、08年フジテレビ「CHANGE」、09年NHK大河「天地人」、映画「沈まぬ太陽」に出演し、00年映画「ホーム・スイートホーム」に主演した。特技は英語。趣味は美術鑑賞、陶器収集。175センチ。血液型A。