先日、岩下志麻と夫の篠田正浩監督のトークショーを取材しました。2人で、67年に設立した映画製作会社「表現社」の50周年を記念したイベントですが、結婚も50周年だそうです。結婚当時の秘話も聞くことができました。

 結婚前の岩下は超人気女優。篠田監督も「松竹の箱入り娘でした」と表現するほど。そんな時、篠田監督の作品ではない映画のキャンペーンから戻った岩下に、篠田監督が声をかけると「こんな寒い土地で、こんな寒い映画では、お客が来るわけがないと、映画館主に言われました」と答えたそうです。松竹の反対が予想される中、岩下を思う篠田監督は「そこから、駆け落ちしなきゃだめだなと思った」と話していました。

 岩下は、結婚について「両親は放任主義で、自分の好きなように、ただ、自分のやったことには責任を持ちなさいという育て方でしたので、全く反対の声はありませんでした。でも松竹は大変でした。99%反対。毎日、家に重役が来て、『結婚なんてやめなさい。1人の男の所有物になるなんてとんでもない』と怒られました。いっぱい脚本を積み上げて『これだけ主演作を用意しているんです』と言われました」と明かしていました。さらに岩下は「すごく反対されると意地になっちゃうんです」と笑って結婚の経緯を話していました。

 篠田監督がこの50年を振り返り「僕は映画監督としてラッキーだと思うのは岩下志麻と出会えたこと。その一言です。映画という魔物にとりつかれて2人で魔物退治をやっていたようなもの」と語ると、岩下は「すごいことを言われて涙が出そうになりました」と感激していました。また「私も篠田と出会ったことで、いろいろな作品で、いろんな役を演じることができました。本当に今の私があるのは篠田のおかげだと思っています」とも。

 互いに尊敬し、感謝しあえる夫婦。うらやましいほどすてきな夫婦です。