今年デビュー20周年を迎えた演歌歌手、大ちゃんこと北川大介(47)。レジャー面のグルメ特集として、大ちゃんおすすめの店を特集しようと思って取材をお願いしたが、実はそのお店の店主高橋敏さん(76)は歌手北川大介を支えるどころか人間北川大介を形成する上でかなり重要な位置を占める存在だった。

 高校野球でピッチャーをしていた大ちゃんは野球をやめたのをきっかけに、父のすすめでトップアマだった高橋さんにゴルフを習い始める。その時の条件は「自分以外に教わらないこと」だった。ゴルファーなら理解できる話だろうが、プロでも人によって言うことが違う。そのため、指導者が多いと「船頭多くして船山に上る」という結果になることが往々にしてあるのだ。高橋さんが大ちゃんに伝えたのは「ゴルフ意外のことを考える時間があるなら、ゴルフのことを考えろ」だった。この教えが大ちゃんをプロゴルファーにまで育てたのだ。

 のちに歌の道に転向するときも高橋さんに相談した。「まだ小学校1年の時にでかい講堂で6年生までの児童集会みたいなのがあってね。そこに1人でいって話しをしていたんです。その辺がもう頭に残っていてね」と振り返り、「歌謡界の募集があって受かって『師匠どうしようか』っていうから『そっちへいけ!』って」。まさに、歌手北川大介誕生の瞬間だ。「彼はそういう人気商売のほうが絶対にいい。人間性がね、今どき珍しい地味でまじめな子なんだよ。どこに行っても話すと好かれるタイプ。だから、歌に行っても人に好かれると思っていた。そこが彼の1番尊いところだと思うんだ」。同席した事務所関係者も「初めて聞きました」と告白した話だ。「僕は大介の心配はしていない。心配しているのは身体のことだけ。病気さえしなければね」と話してくれた。

 この日、1つエピソードがある。同店の取材を終えて大ちゃんは地元のレコード店を訪れた。同店にはうわさを聞きつけたファンが集まっていた。ファンに囲まれて写真撮影やサインに応じていたが、ファンの要求は時に暴走する。この時も「歌ってよ~!」とむちゃを言い出した。実はこの日、大ちゃんは風邪気味で声がかれていた。しかし、嫌な顔ひとつせず、アカペラで「横浜のブルース」をワンコーラス披露したのだ。「人気商売だから当然だろう」と思うかもしれない。しかし、高橋さんの話を聞いたあと目の当たりにした光景だっただけに、「芸能界で20周年を迎えられるのはこういうところなんだな」と妙に納得したシーンだった。