シンガー・ソングライター浜田省吾(64)とグラフィックアーティスト田島照久氏(68)の合同展覧会「浜田島5」が東京・渋谷ヒカリエホールで行われている。写真家でデザイナーの田島氏は尾崎豊さんなど多くのアーティストのジャケットデザインを手掛ける。アニメ関連では「攻殻機動隊」「機動警察パトレイバー」などの企画に関わるなど、デジタルアートの先駆者でもある。

 中でも浜田の楽曲ジャケットやポスターの写真撮影、デザインは30年以上、田島氏が手掛けている。自ら写真を撮り、デザインをする作家はあまりいない。09年に始まって以来、5度目を迎えた浜田島でも「DOWN BY THE MAINSTREET」「J.BOY」や最新アルバム「Moonlight Cats Radio Show」など大ヒットアルバムのジャケット写真や、コンサートツアーポスターが、特大サイズで掲示されている。また、ツアーイメージをコンテナにデザインした大型トレーラーのモデルなど立体展示物も充実している。田島氏が撮影した動画を編集した浜田島オリジナルのミュージックビデオも上映。4Kを使ったスライドショーは、壁一面に鮮やかな写真が浮かび上がる。

 ある時、田島氏は浜田をモチーフにした作詞にも挑戦した。できれば、浜田に作曲してもらおうと見せたところ「曲も書いてみたら」と勧められ、5年越しで完成させたという。

 田島氏は「作詞作曲までしてしまい、さすがにやり尽くしたかな」と来年1月8日の閉幕をもって、「浜田島」にピリオドを打つことにした。それでも、準備を進めるうちに、新たな意欲がわいてきた。何より浜田との関係は、これからも続く。「今回やってみて、また触発されたし、新発見があった。彼にはそんなところがあるんです。浜田島は一区切りつけますけど、違う形で」と、早くも創作意欲をかき立てている。

 展覧会の主な来場者は、浜田のファンの年齢層に当たる40~50代。冬休みを迎え、会場には子ども連れの姿もあった。わが子が小学校の高学年になり、家やカーステレオで浜田の曲をかけるようになったという母親は、来場目的の1つが、田島氏のデザインに触れることだったという。「私にとっては、ジャケットの1枚1枚が思い出です。子どもにはこうやって描いたり、こんな表現もあるんだよって気付いて欲しいと思います」。

 思い出の曲とともに、心を動かされた写真やデザインがある。そこに身を置くと、また新たなきっかけが生まれる。浜田が疾走する「ON THE ROAD」は「浜田島」にも秘められていた。