作品賞を受賞した「あゝ、荒野」の岸善幸監督(53)は、「学生時代、脚本を書きながら皿洗いをしていた。まさかニューオータニの料理を(受賞者として)いただけると思わなかった」と壇上で笑みを浮かべた。

 「あゝ、荒野」は、寺山修司氏の唯一の長編小説を映画化した。岸監督は「僕らとしては、新しい解釈で小説の映画化に挑戦した。ボクシングシーンを中心に熱く魂あふれる作品にした」と作品について語った。

 「あゝ、荒野」などで、史上最年少で主演男優賞を受賞した菅田将暉(24)は、ボクサーの新次を演じるために体重を10キロ落とすなど半年間、肉体改造したという。また菅田演じる新次と最終的に戦う建二を演じた韓国の俳優ヤン・イクチュンは、指の腱(けん)を痛めたという。

 花束プレゼンターとして登壇したユースケ・サンタマリアは、撮影現場の様子について聞かれ「殺伐としていました。男ばかりで、1人でもいいから女性が欲しかった」と言い、客席を笑わせた。そして「監督はカットをかけない。ムカついていたけれど、カットをかかるまでやるんだと。(撮影した映像を)見たら結構、使われている。そういう演出法だったんで、随所でリアルで生々しい。半分、役と本人が混じり合った存在になる」と、岸監督に演出法を明かした。