第68回NHK紅白歌合戦(総合で午後7時15分)の放送が、目前に迫ってきた。29日から3日間、行われたリハーサルを通して取材した記者が、2年連続で今年の紅白の見どころを紹介する。

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 今回の紅白歌合戦は、オープニングから見逃せない…いや、決して見逃してはいけない。総合司会の内村光良(53)、白組司会の嵐・二宮和也(34)、紅組司会の有村架純(24)の3人を中心に、出場歌手46組が登場するオープニング映像は圧巻だ。

 舞台はNHKのある東京・渋谷で、郷ひろみが渋谷109前で大見えを切れば、出場歌手がスクランブル交差点を練り歩く。嵐の5人が井の頭通りを仲良く並んで歩く中、1人、離れる二宮を4人が手を振って見送る。そして、ラストはNHKホール前で、内村と二宮と有村がキレキレのダンスを披露して、生のNHKホールに画面が切り替わる流れになりそうだ。

 音楽はNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の音楽を手がけた宮川彬良氏、ステージングは2020年東京五輪・パラリンピックの開・閉会式の演出を手掛ける「4式典総合プランニングチーム」の1人で、人気女性グループ「Perfume」(パフューム)の振り付けを手掛けるMIKIKO氏(40)が担当。内村は「何てぜいたくなオープニングでしょう」と驚いている。

 このオープニングを筆頭に、歌手の後方に設置されたスクリーンに映る、歌唱中の映像も超美麗だ。エレファントカシマシが「今宵の月のように」を歌うバックには、月に照らされた夜の町が浮かび上がった。

 15年の紅白出場後、体調不良でのライブ活動休止を経て紅白のステージに復帰したSuperfly(スーパーフライ)が「愛をこめて花束を」を歌うバックには、銀河を思わせる青い光、流星、真っ赤な巨大な花などが浮かび上がった。

 美空ひばりさんの名曲「人生一路」をカバーする市川由紀乃(41)は、歌唱中にひばりさんの映像が映し出される。さながら、時の流れを超えて実現したデュエットのようだ。

 16年の紅白でも、アニメ映画「君の名は。」、映画「シン・ゴジラ」とのコラボ企画=映像が話題を呼んだ。「君の名は。」は、新海誠監督が製作した特別編集映像が、主題歌「前前前世」で初出場のRADWIMPSの歌唱時に流れた。「シン・ゴジラ」は、新たに撮影されたシーンが盛り込まれた映像が流され、X JAPANが「紅」を歌ってゴジラを撃退するストーリーとなった。面白い企画となった一方で、歌を楽しみたい、集中したいという音楽ファン、お茶の間からは「内容が煩雑」などと批判の声もあった。

 今回の映像は、出場歌手の歌唱、歌の世界観を大切にし、歌の魅力をより引き出す、増すものとなっている。関係者によると「歌の世界観を壊さない映像」という基本コンセプトを元に、NHK局内の映像デザインセンター主導で局内でイメージボードを作り、丁寧に作り上げた。前日30日夜になっても、完成していない映像もあるという。

 映像を引き立てる狙いから、ステージのセットはシンプルなものにしたという。また、映像の使い方も、メリハリを考えたという。例えば、ギター1本で弾き語りをする竹原ピストルの場合は、高い歌唱力をより引き立てるため、あえて映像は使わず、真っ暗な中、竹原1人にスポットライトを当てる演出にしたという。

 歌を重視した紅白…中でも、リハーサルの際、記者の反応が良かったと現場で感じられたのが、エレファントカシマシだ。周囲でも「エレカシは聴きたい」と、ロビーで原稿を書くなどしていても、ホール内に足を運ぶ記者が多く「最高だった」、「すばらしかった」との声が相次いだ。内村も「この曲が聴けるのが、うれしくて…よっしゃあ、と思った。酒が入っていたら泣いている」とまで絶賛した。

 歌唱力、人気など17年を代表する歌手が集まった紅白の舞台で、あえて1組を推すとするなら、エレカシだ。バンド30周年で初出場したバンドの歴史のみならず、自身の人生そのものを込めたかのような、宮本浩次(51)の魂の歌声は必聴だ。【村上幸将】