9月に引退する安室奈美恵(40)が12月31日、特別出演歌手として「第68回NHK紅白歌合戦」に出演して、全国のファンにメッセージを送った。16年リオ五輪NHKテーマ曲「Hero」を同局内のスタジオで歌った。ラスト紅白のステージで歌唱後、目を潤ませた。

 安室は、日本中が固唾(かたず)をのんで見守るラストステージに、純白の衣装で登場した。過去25年間の道のりを表すかのような奥行きのあるセット。マイクを握り、全国に向けて、あらためてあいさつした。「とにかく、いろいろ経験させていただいて、充実した25年間になったなと思っています」。この日、歌った「Hero」に込めた思いを語った後、再び全国のファンに向けてメッセージを送った。「来年の9月に、私は引退します。私らしく引退の日を迎えたいなと思いますので、皆さんぜひ、応援よろしくお願いいたします」。緊張からか、そう言い終えると、手で顔をあおぐしぐさを見せ、照れ笑いした。

 まばゆいライトを浴びながら、「Hero」を堂々と歌い上げた。歌い終えると、大きく息を吐き、左手を胸に当てて安心したような表情を浮かべた。頭を下げた後、「ありがとうございました」とささやいた。左手を振って出番を終えようとしたが、こらえ切れず涙があふれた。手でそっと拭うと再び笑顔を見せた。最後の紅白は涙と笑顔で締めくくった。

 NHKの熱心なオファーに応えた背景に、できる限り多くのファンに歌を届けたいという思いもあった。2月から全17公演の全国5大ドームツアーを行う。同一ツアーとしてソロ歌手のツアー動員記録となる75万人を動員予定で、チケット応募は404万以上。倍率は5倍以上となった。残念ながらライブを見ることができないファンの存在を意識したのか、2010年以降出演してこなかった音楽番組出演に心が動いた。思えば紅白のステージは人生の節目にいつもあった。出演を決めた。先月19日以降演出について話し合いを始め、同25日から照明や映像などセットの詳細に至るまで本人も交えて入念にリハーサルを重ねた。

 関係者によると、9月以降の予定は白紙で、まずは年明けからツアーに全力投球する。紅白で多くのファンに歌声を届けたが、ラストツアーでライブビューイングも検討しているという。できるだけ多くのファンに歌を届けたい。引退まで9カ月。安室は歌い続ける。【大友陽平】