落語家春風亭小朝(62)が、大正から昭和にかけて活躍した作家菊池寛の短編小説の落語化に取り組んでいる。16年から「菊池寛が落語になる日」と題した落語会を行い、先日は6回目の落語会が行われた。

 これまでに演じた作品は、第1回が「入れ札」「奉行と人相学」、第2回が「ねずみ小僧」「妻の手紙」、第3回が「野布袋の竿」「うばすて山」、第4回が「お見舞い」「時の氏神」、第5回が「好色成道」「竜」、先日の第6回は「羽衣」「楊貴妃」だった。

 菊池寛の小説を読んで、「これは落語になるのではないか」と思い立って始めたシリーズ企画。菊池寛作品の落語版を2席、古典1席という趣向だが、毎回、「満員御礼」の人気落語会となっている。いつも感心するのは、巧みな構成と、気の利いたオチに、新作とは思えない風格さえ漂う仕上げになっていることだ。多忙な小朝だが、好きな小説を落語にする作業は苦にならないのだろう。高座から自らも楽しんでいる様子がうかがえる。

 そして、小朝が、この落語会同様に16年から続けているのが「伝統文化講座」だ。若手落語家を対象に、古典を演じる際に欠かせない伝統文化の素養を分かりやすく解説する講座で、毎回、それぞれの分野の専門家を招いて行っている。講座参加は無料で、会場費、専門家への謝礼などもすべて、小朝の持ち出しとなっている。9日には9回目となる「伝統文化講座」が開催されたが、小朝の強い思いがこもった企画でもある。