4月に亡くなっていた歌手森田童子さん(享年65)の「ぼくたちの失敗」を、93年に連続ドラマ「高校教師」の主題歌に起用した元TBSプロデューサー、伊藤一尋氏(63)が、日刊スポーツの取材に応えた。

 伊藤氏は「森田さんは表舞台に出てこない人で、ご本人とは話しをしていません。ご主人とかと話した記憶があります」と振り返った。

 森田さんの曲を起用するきっかけは、「高校教師」の脚本家・野島伸司氏(55)との会話だったという。「野島さんが、高校をサボって吉祥寺へ森田さんのライブを見に行った話しをしてくれた。僕も学生時代にやっていた芝居で、森田さんの曲を使ったことがあった。そこでリンクして、2人とも森田童子が好きだったということで、久しぶりに彼女の曲を聞いてみたいと思った」という。

 森田さんの所属したレコード会社に問い合わせると、すでに廃盤になっていて原盤しか残っていなかった。「『主題歌になるかもしれない』とお願いして、曲をラジカセに起こして送ってもらった。聞いているうちに『これはいい曲だ』ということになって、起用を決めました」。

 「高校教師」では主題歌の「ぼくたちの失敗」だけじゃなく、『男のくせに泣いてくれた』『G線上にひとり』など、シリーズ中の挿入歌として5、6曲使った。

 連続ドラマの主題歌がビッグヒットを産み、利権をめぐって大きなビジネスになる時代だった。伊藤氏は「軋轢(あつれき)は多少はあったけど、制作サイドが強い時代だった。自由にものを作りたいという気持ちを優先させてくれた」。トレンディードラマをヒットを飛ばす、ライバルのフジテレビに対抗する気持ちもあった。「ドラマバブルの時代で、フジテレビのドラマではCHAGE&ASKAやユーミン、小田和正らビッグアーティストの書き下ろしを使っていた。僕としては過去のいいものを掘り起こして行きたいと思っていた。その後、カーペンターズとか一連の過去の名曲を使っていく最初になりました。ご冥福をお祈ります」と話した。