女優のん(25)が終戦記念日の15日、東京・新宿のテアトル新宿で、主演を務めたアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)の再上映会舞台あいさつに、片渕監督と出席した。

 広島・呉市を舞台に、原爆や戦争をめぐる混乱に運命をほんろうされる市民の日常を、主婦すず(のん)を中心に描いた。16年11月12日に同劇場で公開初日を迎えてから、この日で642日目。以来、1日も途切れることなく、日本のどこかで上映が続いている。のんは「本当にうれしいことだなと思う。1つの作品に参加して、こんなに長く付き合っていることは初めて。とても貴重な体験で、こんなに皆さんに愛されている作品は、世界中どこ見てもこの作品だけなんじゃないか」と胸を張った。

 異例のロングラン上映で、累計上映館数は400館を超え、動員は209万人。この夏も全国27館で上映されている。片渕監督は「作っているときは、クラウドファンディングでたくさんの方にお願いしないと作れないのでは、というところから始まった。でき上がった後もこの映画のことを応援してくれて、今日に至っています」と感謝した。

 この日は終戦記念日で、劇中にものん演じるすずが終戦を知り、むせび泣くシーンがある。のんは「最初は、すずさんが泣いている声を録音するときに、涙を流さなくてもテクニックで泣いてる声を出さないといけないと思っていました。でも、鼻に掛かったような泣いたような声にならないと、すずさんのリアルに耐えられないと思い、監督が録音ブースを真っ暗にして、のんが集中できるようにしてくれた」と振り返った。片渕監督は「8月半ばだったかな。2年前のあのころ、ちょうどやっていた。懐かしい」と懐かしそうに補足した。

 12月には、本編で泣く泣くカットした映像に約30分を追加した「この世界のさらにいくつもの片隅に」を公開する。のんは既に特報用のナレーションで再びすずの声を当てた。「期間が空いていたので、ちょっとできるかなと不安な気持ちでした」。録音はちょうどのんの25歳の誕生日(7月13日)の前日で、お祝いのケーキが用意されたという。のんは「監督が半分、食べちゃった」と話を盛り、監督がツイッターで「半分は食べてません」と釈明した。のんは「話、盛っちゃいました」と打ち明けると、場内は爆笑に包まれていた。