約300万円と低予算で製作されたインディーズ映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)が、東京・新宿K’sシネマと池袋シネマ・ロサで封切りした6月23日から公開100日を迎えた30日、“聖地”の1つ、池袋シネマ・ロサで公開100日記念舞台あいさつを行った。

この日は、台風24号が関東に接近し、首都圏でも午後8時以降にJRの在来線全線が順次、運行を取りやめていく中、舞台あいさつは同8時10分にスタートした。実は、全国100館の劇場に拡大公開が決定したと発表された7月28日も、台風12号が関東周辺を直撃。その中、上田慎一郎監督(34)と主演の濱津隆之ら主要キャストは山梨県富士河口湖町で行われた「第4回 2018 富士 湖畔の映画祭」で、東京・渋谷のユーロスペースでは山口友和が暴風雨を押して舞台あいさつを行った。

全国100館の拡大に続き、100日公開記念日となったこの日も台風が直撃したが、満席となった池袋シネマ・ロサにキャスト、スタッフ17人が登壇した。上田監督も、10月1日に予定されていた大阪のイベントが中止となり、急きょ駆けつけ「熱々ですかぁ~! 台風ということでJRが止まるから、みんな、無理しないでと言っていたのに…」と客席に呼び掛けた。

公開当初、池袋シネマ・ロサ2階の193席あるスクリーン1は、50~60席しか埋まらなかったという。それが、公開が100日まで延びた。上田監督は「公開200日は(19年)1月7日? 調べがついていますね。スケジュール、空けておいてください」と、次の目標に公開200日を掲げた。

その上で「本当に、とんでもない100日でございました。ヘタしたらこの30年、誰も経験できない100日…でも、手ごわいけれど超えていかないといけない」と固く誓った。上田監督自身、「作家主義」「俳優発掘」を掲げる、松竹ブロードキャスティングで長編映画第2弾を始動させることが決まった。「カメラを止めるな!」同様、俳優はプロ、アマチュア問わず今冬に行うオーディションで決めるという。同監督は「それぞれが別のステージで成長し、より大きなステージで組んで、それを見ていただいて…という形でつながっていければ。200日、300日と続いていけばうれしいですし、一緒に走っていければうれしい」と観客に呼び掛けた。

「カメラを止めるな!」は、新人監督と俳優を養成するスクール「ENBUゼミナール」の映画企画第7弾。上田監督が13年に小劇団の舞台に着想を受けて発案した企画を元に、17年4月にオーディションでメインキャスト12人の俳優を選び、映画製作を前提としたワークショップを開催。上田監督が12人を当て書きする形で登場人物を描いた脚本を書き、その直しとリハーサルを繰り返し、俳優とともに作り上げた。17年11月に東京・新宿K’sシネマで6日間限定で行ったイベント上映で面白さが話題を呼び、その後、国内外の各映画祭で評価されたこともあり、6月23日から同劇場と池袋シネマ・ロサで封切られた。

この日までの累計上映決定館数は、326館(上映中は245館)で、29日までに172万4856人を動員。興行収入は23日時点で23億円を突破した。また、米テキサス州で開催されたホラーとファンタジー映画を中心とする全米最大規模の映画祭「ファンタスティック・フェスト2018」で、上田監督がホラー部門で最優秀監督賞を受賞した。