俳優藤原竜也(36)鈴木亮平(35)が、舞台で10年ぶりに共演することが29日、分かった。

10月4日に東京・新国立劇場中劇場で初日を迎える舞台「渦が森団地の眠れない子たち」でダブル主演を務める。2人が演じるのは小学生。団地という特殊な環境の中、ふとしたきっかけで変わる力関係に翻弄(ほんろう)される少年たちを演じる。

2人の共演は、09年の舞台「ANJIN イングリッシュサムライ」以来となる。藤原演じるA少年は当初、王様のように振る舞う存在だったが、鈴木が演じる優しく知的なB少年に同級生たちが次第になびいていく。団地という特殊な環境下で、パワーバランスが崩れていく様子を、ギリシャ悲劇風に描いた舞台になる。

昨年のハヤカワ悲劇喜劇賞を受賞した人気脚本家・蓬莱(ほうらい)竜太氏の書き下ろし作品。同氏は「子供の視点で描くと、団地は戦争、恋愛、ファンタジー、ホラー、恐怖の大人たちと、エンターテインメント性に満ちあふれている」と、舞台設定の妙を明かした。小学生の目には壮大に映る、小さく狭い世界を舞台に、脂の乗った30代の2人が挑む。15年公開の映画「俺物語!!」で、32歳ながら高校生を演じた鈴木は「『もう高校生を演じることはないだろう』と思いましたが、まさか小学生を演じることになろうとは」と驚いた。

藤原と鈴木は、実際に同学年。だが、役者としてのキャリアに大きな違いがある。藤原は故蜷川幸雄氏に見いだされ、15歳から舞台を軸に活動してきた。一方の鈴木は、大学卒業後にテレビドラマなどで力を付け、昨年はNHK大河ドラマ「西郷どん」で主演を務めた。そんな2人が、初めて同級生役で共演する。

梶山裕三プロデューサー(40)は「お互いのフィールドで成長した2人が、戦うところが見たかった」と起用理由を説明した。

稽古は9月からだが、鈴木は「ヒリヒリした緊迫感と迫力を感じていただけるぶつかり合いをお見せできたら」と早くも気合十分。藤原は「相撲では勝てる気がしないので、演劇で負けないように稽古に臨みたい」と、鈴木が「西郷どん」で演じた相撲シーンを引き合いに、「競演」に期待を寄せた。東京のほか、大阪などでも上演される。

◆藤原と鈴木の共演 映画、舞台で1度ずつあり、初共演は09年10月公開の映画「カイジ 人生逆転ゲーム」。藤原が借金を背負ったフリーターのカイジ役で主演、鈴木は借金を取り立てる金融業者の部下役だった。同年の舞台「ANJIN-」では、藤原が宣教師、鈴木が小早川秀秋役で、絡みはほぼなかった。ともにNHKドラマ「精霊の守り人」にも出演しているが、共演シーンはない。