ホームレス生活を経てハリウッド大作の主役を射止めた女優がいる。「アバター」「タイタニック」で知られるジェームズ・キャメロン監督(64)が製作した映画「アリータ バトル・エンジェル」(ロバート・ロドリゲス監督、22日公開)のローサ・サラザール(33)。来日した異色の新星に話を聞いた。

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-モーション・キャプチャーという手法で、あなたの動きは変換され、劇中にはサイボーグとして登場します。生きた人形のようなアリータ(役名)をご覧になっていかがでした。

「オーディションで出演が決まったことも驚きだったけど、独特な世界観の中で、私の分身が動き回る映像を見た時は、もう言葉にならなかった。表情、動き…私のエッセンスがそこに抽出されていて、本当にその世界で動き回っているように思えました」

-木城ゆきとさん(51)のコミック「銃夢」が原作です。日本的なものを感じましたか。「設定はアジアではなく、人種のるつぼのようなところ。でも、日本の『マンガ』らしく、真っすぐに真心がこもったところがあって、登場人物たちが触れ合ういろんなエピソードにそんな日本の優しさを感じました」

-表情が豊かですね。それが劇中のアリータにも反映されていたように思います。

「子どもの頃は部屋にこもり、ぬいぐるみの前でお芝居して泣き顔や怒った顔をしていました。変な子ですけど、その頃から演じたいという衝動があったんですね。女優になるのが宿命だっていう意識はずっとあったんですけど、なかなか家族や周りの人に言い出せなかったんです」

-女優に踏み出すきっかけは?

「15歳で家族を離れて独立しました。高校を出た17歳から2年間、アメリカ中を回ったんです。ありていに言えばホームレス生活です。救護施設にお世話になったこともあります。こんな私ですけど、名門大学に通っている友達もいて、各地にいるそんな人の部屋を渡り歩きながら、雨露をしのぎました。私は『カウチ・サーフィン』と呼んでいたんですけど(笑い)。みんな守護天使みたいな人。生活費を稼ぐためにワシントンDCでバーテンをしたこともありました。19歳の時にそんな友達の1人からニューヨーク行きを薦められ、背中を押される形で本格的な女優修行を始めたんです」。

-ホームレス生活で絶望的な気持ちになったこともあったのでは?

「もちろんです。純粋さを失ったと思う時期もあったし、思春期まっただ中ですから、思いっきり落ち込むこともありました。いろいろトラウマを抱えて、鏡で見た自分の顔が今より老けて見えたこともありました。でもどん底を経験したからこそ、その後、女優修行に打ち込めた気がします」。

-ニューヨークでいくつかの短編映画に出た後、8年前にロサンゼルスに移ってから「メイズ・ランナー2」や「ダイバージェント NEO」で役が付くようになりました。

「そうですね。どんな作品でも、ずっとアクティブでいられたのは10代の経験があったからだと思います。今回も撮影の6カ月前からマーシャル・アーツなどの訓練に思いっきり打ち込めました。ハードなレッスンがあっても、いつでもどこでも眠ることができる特技がありますから(笑い)」

◆アリータ バトル・エンジェル

世界中を破壊した「大戦」後の未来は、天空に浮かぶユートピア「ザレム」と、そのザレムから排出されたくず鉄が堆積した荒廃した街「アイアンシティ」に分断されている。

アイアンシティで「サイバー医師」として暮らすイド(クリストフ・ヴァルツ)はある日、くず鉄の山から少女サイボーグの頭部を発見する。それは大戦中に失われたテクノロジーを満載した「最終兵器」の中枢部分だった。

イドによって全身を再生されたサイボーグは亡くなった彼の娘と同じ「アリータ」と名付けられ、しだいに能力を発揮し始める。

そのハイテクにザレムからも魔の手が伸び、次々に強敵が現れるが、やがては彼女の力が分断された世界を揺り動かし始めて…。

◆ローサ・サラザール 1985年7月16日、ワシントンDC生まれ。24歳の時にTVシリーズ「LAW&ORDER LA」に出演して本格的に女優活動を始める。サンドラ・ブロック主演のSFスリラー「Bird Box」(NETFLIXで配信中)にも出演している。