尾上菊之助(42)が14日、都内で、国立劇場3月歌舞伎公演「通し狂言 義経千本桜」(3~26日)の取材会に出席した。

佐藤忠信・源九郎狐、平知盛に、今回が初役となるいがみの権太を加えて、主人公3役の完演に挑む。

菊之助は「3役演じるのは夢でした。これからの10年につながっていく1日1日だと思い、肝を入れてつとめたい」と意気込みを語った。

20代のころ女形を中心につとめていたことを振り返り「3役やることは夢でしたが、実現できるのか不安でした。あきらめちゃいけないと思って、見続けてきました。こうして形にさせていただき、これがスタート。2回、3回やっていかなければ自分の芸にならない。過去の自分に、よくあきらめなかったねと言ってあげたいけど、もっと勉強しろよ、とも言いたい」と話した。

3つの役をつとめることの難しさや、作品の魅力について、菊之助は「荒事あり、舞踊あり、世話物ありと演じ分けなくてはいけない難しさはある。『-千本桜』は、義経という敗者の物語で、自分が行ったことは自分に返ってくるという人間の業の話。非常に普遍的なテーマ。先人たちが磨き上げてきた作品の力がある」とした。

長男尾上丑之助(6)が、銀平娘お安実ハ安徳帝を演じる。菊之助は「せりふの言い方などは教えますが、源平の背景も分かった方がいい。『義経千本桜』のネコの絵本で、君の役はこれ、お父さんはこの3つをやると言って教えています」と、登場人物をネコにした絵本を一緒に読んでいるとした。

昨年の新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を作り上げた経験を踏まえ「先人たちが築き挙げた叡知(えいち)で、私たちの体や血が作られていると感じました。古典を作り上げた熱い思いを、新作をやることで感じました」と語った。

同作出演中、左ひじの一部を亀裂骨折するハプニングもあったが、菊之助は「今月に入って休養もありますし、リハビリもできています。初日までにはきちんと両腕も伸びて、(いかりを)持ち上げられるのではと思います」と知盛の名場面を挙げて、順調な回復ぶりを語った。

物語の中心場面を3つのプログラムに分け、A~Cプロで上演する。