新型コロナウイルスの感染拡大で客足が落ち、存続の危機に立たされた全国のミニシアターの支援を目的に、13日に始まったクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」が、スタートから3日目の15日午後9時45分に、目標額1億円を突破した。

同基金によると、国内最大級のクラウドファンディング・プラットフォーム「モーションギャラリー」で行ったクラウドファンディングが、開始から24時間で5500万円突破したのは国内最速記録だという。また文化芸術活動のクラウドファンディングにおいての1億円達成は日本初、そしてモーションギャラリーでも史上初となった。

1億円達成から一夜明けた16日、発起人の深田晃司監督、浜口竜介監督らがコメントを発表した。

浜口監督は「『ミニシアター・エイド基金』、当初の目標であった1億円に達しました。最終的に達成できると確信はしていましたが、それでもあまりのスピードに、驚いています。(中略)多くの方がミニシアターの置かれた窮状を知り、支援をするタイミングをうずうずするような気持ちで待っていた、ということ。本当に多くの劇場の参加と、映画人からの賛同・サポートを得られたこと。ただ、1番の理由は多くの人が、ミニシアターで映画の魅力を知った、という自分の記憶に行き着いたことだと思います」と1億円到達の要因を分析した。

その上で「だから、このファンディングは支援という以上にその体験への『恩返し』なのではないでしょうか。少なくとも、私にとってはそうです。ミニシアターの人たちが今まで志を支えに続けてきた仕事に対して、支払うべき対価を私たちはようやく今払っているような気がしています。そして、それはあらゆる意味で、まだ十分ではないとも思います」とミニシアターへの、さらなる恩返しを誓った。

深田監督は「驚くべきスピードで達成された1億円という額を見て、もともと私たちが考えていた『目標金額』がいかに浅はかなものであったかを実感しました。本音を言えば、1億円という数字は『未達成』を恐れて、理想よりも確実さを優先し、支援とのバランスを計りつつも慎重に設定されたものでした。それでさえも、達成には十分に1カ月を必要とすると覚悟していたのですが、映画ファンの思いの強さは私たちの想定をはるかに超えていました」と思いを語った。

その上で「今回のアクションによって、ミニシアターになくなって欲しくないと願う人がこれだけいるということが可視化されました。本来は、平時においてもこの願いをきちんとすくい取り、劇場を恒常的に支援する公的な枠組みがあるべきなのです。それは、国だけの責任ではなく、映画業界の内部においてさえも制度設計がおろそかにされてきたことの反省をコロナ禍後に私たちは行い、改善していかないといけません」と、ミニシアターへの公的支援及び映画業界内での制度設計の必要性を訴え、映画業界を含めた改善への決意をつづった。

基金は13日午後1時に、5月14日までの1カ月間の期限付きでスタート。参加を表明した劇場が休業を1、2カ月してもつぶれないよう運営団体1つあたり、平均150万~200万円を分配することを目指し、目標額を1億円に設定。スタート段階で78劇場が参加した。

また支援者へのリターンとして、「この世界の片隅に」の未公開ドキュメンタリーを配信サイトでの配信用に提供した片渕須直監督は「なんという加速度でしょう! 全国のミニシアター、あるいはそこに繋(つな)がる映画界に心を寄せてくださる方々がおられることが、刻々と支援の数字として示されていきます。なんとありがたく、心強いことでしょう!このクラウドファンディングは、まだあと1カ月に近い期間を残しています。今回の災厄がいつまで続くのかわからない今、全国のミニシアターのみなさんの安心がさらに得られることを願いたい。そして、こんなことが過ぎ去ったとき、存分に映画を見に来ていただけるようでありたい」とコメントした。

クラウドファンディングは5月14日までが期限だが、4日目の16日午後11時50分段階で、1万人以上から1億1020万6761円の支援金が寄せられている。浜口監督は「参加団体は開始直後から10近く増えて、現在72団体です。現在打診を受けている団体も含めれば、きっともっと増えます。1団体当たり平均で140万円程度です」と参加団体が増えたことと、現状で各団体に分配できる支援金の見通しを示した。

その上で「コロナ禍の状況は、単に1、2カ月で収束するものではなく、長く続くものであるのは明らかです。本当に皆が安心して外に出られるまで、ミニシアターを保持するには決して十分ではありません。ファンディングは残り29日。現在、新たな目標設定を検討しています。先は長いです。急ぎすぎず、1人1人無理のない範囲で、ちょっとずつ積み上げましょう」と、新たな目標設定を考えていることを示唆した。