映画「MOTHER マザー」(大森立嗣監督、今夏公開)で奥平大兼(おくだいら・だいけん=16)が、主演長沢まさみ(32)の息子役で俳優デビューすることが26日、分かった。

同作で初オーディションを受けたまっさらな新人が、初演技で難役に挑んだ。

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殺人事件を犯してしまう少年を、母と息子の視点や社会から孤立する家族などの視点から描いた作品。奥平は、母のゆがんだ愛情を受けて育つ息子を落ち着いて演じた。

中学1年の時、渋谷駅でスカウトされたことが俳優になるきっかけとなった。改札ゲートが閉まり足止めされた偶然が運命になった。昨年、勉強のために受けたオーディションで少年役に抜てきされた。「うれしいより驚きの方が大きかったです」と振り返った。

小学校の学芸会では立っているだけのおじいさん役でせりふはなかった。演技経験はゼロ。不安は尽きなかったという。奥平は「過酷な環境の中で生きる役なので、演技するの大変だなと心配でした。撮影2~3カ月前には撮影が来ないでほしいと思ったこともありました」と話した。しかし、撮影前のワークショップ参加や大森監督のマンツーマン指導もあり、演技のおもしろさを知った。「その場で感じたことを出すと、同じせりふでも演技が変わるのがおもしろい。撮影が終わるとすぐに、お芝居がしたいと思いました。想像がふくらむような味のある役をもっとやりたい」。

奥平について、長沢は「初めてお芝居をするとは思えないくらい堂々としていた。感じたことや思ったことを素直に反応してくれたので私も助けられました」。大森監督も「演技の中でうそをつかないことをやり通せた。うそをつかないために自分がどういう気持ちにならなければいけないのかという作業を常にしていた」と、素直さを褒めた。

空手やピアノでは集中力を、バスケではチーム意識を学ぶなど、経験も仕事に生きている。すでに目標もできた。「大森監督にまた呼ばれたい。海外でお話しする機会があれば自分の言葉で話してみたい」。大きな夢は遠い夢ではない。【小林千穂】

◆奥平大兼(おくだいら・だいけん)2003年(平15)9月20日、東京都生まれ。18年11月にオーディションで映画「MOTHER マザー」に出演決定。高校1年の19年5月から撮影。趣味は芸術、洋楽、クラシック鑑賞。空手初段で、12年に全国武道空手道交流大会「形」優勝。中学時代はバスケットボール部。あこがれの俳優は山田孝之。「MOTHER」で共演した阿部サダヲのファン。