吉本興業は19日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3月2日から公演を中止していた東京・新宿のルミネtheよしもとなどの5劇場の公演を、110日ぶりに観客を入れて再開した。

ルミネtheよしもとでは、感染防止対策として、隣の席と3席分空けて1・8メートルの間隔をとって座席を販売。458席中、12・4%の57席にだけ観客を入れた。チケットを入手できなかったファン向けには生配信が行われた。

この日は1時間半の公演で、プラス・マイナス、GAG、ゆにばーす、佐久間一行など8組の芸人が出演。コンビの漫才ではコンビの間に2メートルのアクリル板の仕切りが設けられ、それぞれ上手、下手の両サイドから別れて舞台上に登場。出演者が変わるごとにマイクとアクリル板の交換、消毒が行われた。

開演前にタカアンドトシと和牛が、ステージに登場してあいさつ。和牛の川西賢志郎(36)は「吉本は、いい意味で楽観的に笑って、この危機を乗り越えようとしていましたが、楽屋に消毒用アルコールが置かれ、ソーシャルディスタンスが取られているのを見て、吉本が100年以上の歴史の中で本気になったんだなと感じた」と話すと、タカアンドトシのタカ(44)は「去年は本気出してましたよ」と闇営業騒動をいじって笑いをとった。和牛の水田信二(40)は「本物の消毒用アルコールが置かれていたので、吉本も本気なんだなと感じました」とボケて笑わせた。

トップバッターで登場した漫才コンビ、プラス・マイナスの岩橋良昌(41)は、仕切りのアクリル板を見て「ど突き漫才なのに、ど突かれへん」とぼやいた。

NON STYLEの石田明(40)は、相方の井上裕介(40)に対して「アクリル板が似合うな。取り調べの時みたいで」と、16年暮れに井上が起こした追突事故のことをいじった。井上は「実際の取り調べにはないねん」。そして観客に向かって「みなさんは1回目の自粛でしたが、俺は2回目の自粛でした」と自虐ネタで笑わせた。

この日のチケット代は3000円。オンライン配信は1000円だった。平日の午後2時半開演とあって、観客の9割以上が若い女性ファンだった。トータルテンボス、タカアンドトシなど、頭への突っ込みで笑いを取る漫才はアクリル板の仕切りに戸惑いも見せたが、笑いが劇場に戻ってきた。

公演後、NON STYLE石田は「やっぱり楽しいですね。お客さんの堪能があるから弾ける」。井上は「お客さんの笑い声が聞こえるのはうれしい。お客さんの笑い声が芸人を喜ばせてくれる」。和牛の川西は「楽しかった。オンライン配信も、これからは日常化していくでしょう」。水田は「久しぶりの劇場で、かみましたが想定内。やっとできるようになった喜びがあって、いいことやなと思った。生配信は(後で)自分でも見て、次の舞台に行かせると思う」と話した。

吉本興業は緊急事態宣言の解除を受けて今月6日から東京・ヨシモト∞ホールと大阪・よしもと漫才劇場の無観客公演をスタートさせていた。この日からは、ルミネtheよしもと、千葉・よしもと幕張イオンモール劇場、大阪・NGKを加えた5劇場で、感染防止対策を徹底して観客を入れ、7月12日までの金~日曜の週3回公演を実施する。他の曜日は無観客公演になる。

吉本興業関係者は「まだ、観客をいっぱいに入れているわけではないから、ここからがスタート。来月12日まで、この形式でやって、そこから、また新しい形でやっていけるようになれば」と話した。