河瀬直美監督(51)がエグゼクティブディレクターを務める、なら国際映画祭事務局は4日、奈良市内の東大寺大仏殿前東側芝生で会見を開き、9月18日から22日まで世界遺産である同大仏殿を中心とした会場で、6回目となる映画祭を開催すると発表した。

目玉企画として、東大寺の正面参道にレッドカーペットを敷く、史上初の試みを行う。レッドカーペットは、初日に映画祭関係者及びゲストが東大寺大仏殿まで歩き、オープニングセレモニーとして東大寺大仏殿特別参拝も決定。同寺で映画のイベントが行われるのも、19年11月に行われた米映画「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」公開を記念し、行われた「スター・ウォーズ音楽奉納」程度と極めて異例だ。

なら国際映画祭は、これまで国内外の若手監督と奈良を舞台とした映画製作を行うNARAtive(ナラティブ)など、海外の映画製作者にも奈良に足を運び、映画祭に参加してもらうことを重要視してきた。それが、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大していることを受けて、オンライン上映を含めた、リアルとオンラインを織り交ぜたハイブリッド型の映画祭を目指す。河瀬監督は「オンラインでつながる、ハイブリッドです。フィジカルで絶対、来てもらわなあかんとなったら、出来なかった。私たちのテーマは、つながりたい…これって人間の基本的な思い。飽くことのない思い。次の世代の子も、このつながりの輪にいるということを感じて欲しい」と狙いを語った。

新型コロナウイルスの感染拡大防止対策も、徹底して行う。通常は300人収容可能なホールでの上映を行うが、座席を半分にして150席とし、検温を実施するなど通常の映画館に準じた対策を行う。チケットはオンラインでの座席指定券で事前予約を行う。またシニア層の観客も多いため、電話での予約にも対応。レッドカーペットも当日はライブ配信を行い、一般客が入場できないように制限を行い、レッドカーペットを歩く際もソーシャルディスタンスを十分に取った上で実施する。

東大寺及び盧舎那仏像(奈良の大仏)は、奈良時代に発生した天然痘の大流行を鎮めるために、聖武天皇が建造を命じたとされている。コロナ禍の中、その東大寺と深く関わった形で映画祭を開催できることに、事務局は「本年、東大寺から特別にお赦しをいただけたことは、昨今の世界の状況を考えますと、我々なら国際映画祭事務局としては身が引き締まる思いです」とした。

今年、開催を見送った世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭のティエリー・フレモー代表も「とても特殊な条件のもとではありますが、それはどの映画祭にとっても同じです。大事なのは開催すること。重要なのは、限られたエリートたちのためだけではなく、全ての人のための映画祭を行うこと。成功を祈っています」などとメッセージを寄せ、エールを送った。