松竹芸能の実力派漫才コンビ「シンデレラエキスプレス」の渡辺裕薫(ひろしげ、52)が20日、本拠地の大阪・心斎橋角座で、CDデビュー会見を行い、大きな夢を語った。

夢とは、紅白出場でも賞レースでもない。「(新型)コロナ(ウイルス)で世の中暗いことばかり。全員が行動制限で、ギスギスしていますが、魔法の言葉で明るくしたい」と話す。

楽曲「とっぴんぱらりのぷう」(21日発売)は、流しで活動する演歌師田浦高志(60)が手がけたコミックソング。ポップで耳なじみがいい曲調に、高級すし店で「かっぱ巻き」だけを食べて出てくる“見えっ張り”な男を歌う。タイトルは秋田の方言。秋田に伝わる昔話の締めの言葉で「めでたし、めでたし」の意味を持つ。

「方言って言葉は呪文のようで、なんで? どういう意味? ってなる。ここまでは成功。後は僕が歌って成功させるだけ」

温かみを持つ言葉の響きに自信を深める。渡辺自身、夢路いとし・喜味こいし、レツゴー三匹、正司敏江・玲児…ら、昭和漫才の匂いを受け継ぐ“熱”を持つ漫才師だ。

「先輩方がどんどん亡くなってしまい、なおかつ先輩たちにも(コロナ禍で)なかなか会えない寂しい状況だった」

酒井くにお・とおる、海原はるか・かなたら、所属事務所の先輩たちとも、なかなか仕事ができない日々だったと嘆く。興行が再開されても「ソーシャル・ディスタンス(が定着し)お客様の気持ちが半分以下」と、なかなか戻らない寄席への思いもある。

その最中、7月に田浦からCDデビューの話を持ちかけられた。渡辺は7~8年前からバンド活動をしており、これまでにも自費出版でCDを出している。ただ、今回は、キングレコードからの販売で、メジャーデビューになる。

「芸人が歌、コミックソングを出すことは過去にも多くありましたが、今この時代にこの歌を出すことの意味を伝えたい」

というのも、アメリカンフットボール部に所属しながら最後の試合がなかった高校3年の息子から「やるからには照れたらあかんで。やりたいことやれるだけで幸せやん」と励まされたと明かした。

本業では09年に上方漫才大賞の奨励賞を受賞しており「まずは大賞をとらんと!」と言い、歌手としての賞レースへ意識はない。この歌を聴き、渡辺を知り、コンビを知り、漫才へ興味を持ってもらえるかもしれない。その逆もある。

「いろんな局面でいろんなきっかけがあると思う。漫才の舞台にも生きてくるはず」との信念もある。

KBSラジオで20年以上コンビを組む先輩の森脇健児からは「なんで秋田(の方言)や」と言われたが「ヘビロテで曲をかけてくれる」と言い、絆を感じる。「芸人としては30何年やってますが、歌手としては0年生。新人歌手と思ってやりたい」と誓った。