蒼井優(35)が7日、ファッション誌「ELLE(エル)」(ハースト婦人画報社)主催の「エル シネマアワード」で、輝く女優に贈る「エル ベストアクトレス賞」を受賞した。世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した主演映画「スパイの妻」での演技が評価されたもので、黒沢清監督(65)も優れた監督に贈る「エル ベストディレクター賞」を受賞しており、「スパイの妻」は“2冠”に輝いた。

蒼井は劇中で、高橋一生演じる満州で偶然、恐ろしい国家機密を知ってしまった貿易会社を営む夫の行動に疑念を抱くも、夫婦愛から行動をともにしようと動く妻を演じた。「賞をあげてもいいかなと思っていただけたのは、とてもありがたいですし、自分の中で迷いながら、悩みながら、作品をやっていたので、頑張れという意味だと思って、ありがたく受け取らせていただきます」と受賞を喜んだ。

蒼井は今年、同じく高橋と夫婦役で共演した「ロマンスドール」(タナダユキ監督)、「おらおらでひとりいぐも」(沖田修一監督)と3本の映画に出演。この1年を振り返り「経験したことのない時間を、世界中のみなさんが過ごした1年だったと思いますが、たくさんのことを考えるきっかけにもなりました」とコロナ禍の中で思ったことを語った。

自身、ベネチア映画祭では現地への渡航がかなわず、会見も東京と現地をリモートでつないで行われた。「改めて、こんな状況の中だからこそ、映画や舞台でしか得られないエネルギーがあるということを知ることができて、今よりもう少し背筋を伸ばして作品づくりに挑んでいきたいと思うようになりました」と語った。

黒沢監督は「ファッション雑誌の賞をいただくということは予想もしていなかったので、本当にびっくりしました。『スパイの妻』という映画は、これまでになく衣装やメーク、髪形などに相当気を使って作りましたので、そのことが評価されたのかな、と思っております」と予想外の受賞を喜んだ。

「スパイの妻」が世界に評価された一方、同作の撮影を行ったのは19年で、今年はコロナ禍により新作の撮影が出来なかった。黒沢監督は「ベネチア映画祭の銀獅子賞をいただいたことは、先に進むための第1歩であるというのがハッキリと自分の中で位置付けられています。今年は映画を作ることはできませんでしたので、来年こそは、新しい映画をなんとしても作りたい。それが私にとって『スパイの妻』以降の新しい次の一手になるだろうと思います」と新作の製作に強い意欲を見せた。

その上で「今年はコロナ禍でエンターテインメントをみんなで見る、見た人と話し合う、おしゃべりし合うというような場が残念ながらすごく制限されてしまって、それがとてもつらいことでした。そのような場は、遠からず取り戻せるだろうと信じています」とかみしめるように語った。

「エル シネマアワード」は史上初めて、ELLE Japan公式YouTubeと、ツイッターで行われたオンライン生配信で実施した。