文芸雑誌「文學界」(文藝春秋)が、「編集権の濫用」だと抗議する筆者に反論。原稿の一部を削除するに至った経緯を説明した。

在野研究者として活動する荒木優太氏は5日、「今日発売の『文學界』3月号に寄稿した新人小説月評の末尾が編集部によって勝手に削除されました」とツイッターで告発。「岸政彦『大阪の西は全部海』(新潮)に関しては、そういうのは川上未映子に任せておけばいいでしょ、と思った」という一文が削除されたとして、「これは編集権の濫用であり、極めて横暴なものです。『文學界』編集部を強く非難します」と怒りをあらわにした。

「文學界」公式ツイッターアカウントは、「編集部の認識はまったく異なります」とこれに反論。当該箇所について、編集部から「批評としてあまりに乱暴すぎるのでもう少し丁寧に書くか、それでなければ削除してほしい」と依頼したところ、荒木氏の返答は「では、末尾に『全体的におもしろくなかったです。』と付け加えてください」というものだったそう。「とても受け容れられる批評の言葉ではありません」と感じた編集部は、改稿しない場合は当該箇所を削除すると伝えて、荒木氏からは「お好きになさるとよいでしょう」、ただし「その事実をSNS等で吹聴する」という返答があったことを説明した。

「文學界」公式ツイッターアカウントは、「荒木氏の言うように『勝手に削除』したのでは断じてありません。やりとりの記録も残っています」と主張し、「今出ている形は双方の話し合いの結果であり、『編集権の濫用』ではまったくありません」と断言した。

しかし、荒木氏はさらに「『批評の言葉』かどうかを編集部が判断するのがお門違い」「私の意志をちゃんと理解した上で、削除を強行するのは編集権の濫用だと思います」と反論。削除箇所の中で名前を出された岸政彦氏と川上未映子氏もツイッターで見解を表明し、編集者と書き手の関係の在り方をめぐる議論が巻き起こっている。