宝塚歌劇団の雪組トップ望海風斗が8日、兵庫・宝塚大劇場で、サヨナラ公演「『fff-フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~」「シルクロード~盗賊と宝石~」の千秋楽を迎えた。

コロナ禍で退団が半年延期。ファン数千人に見送られるパレード取りやめも、サヨナラショーには雪組全員が出演。昨年に続く2度目の緊急事態宣言も乗り越え公演を完走。同時退団する相手娘役の真彩希帆らとともに、本拠地に別れを告げた。望海らは、東京宝塚劇場千秋楽の4月11日をもって退団する。

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「(宝塚)人生は幸せだった!」。晴れやかな表情の望海は「幸せ」を繰り返した。「朝からすごく幸せで楽しくて、この日のこと、本当に忘れませんっ」。コロナ禍で、数千人のファンに見送られるパレードは中止。劇団によると、少なくとも平成以降で例がない措置も、表情には充実感があふれた。

この日朝の楽屋入りも、本来なら、大勢の仲間、ファンに迎えられるが、それもならず。代わって、楽屋で組子が「熊の着ぐるみ」を用意し「ハチミツのツボ(状のもの)で、みんなの化粧前を歩きました。(ファンの)皆さんも、想像していただくのは無料ですから」と明かした。

今公演では下級生は出演40人ずつに分けられるが、サヨナラショーは全員が出演した。ショーは、トップ就任前の思い出作「ドン・ジュアン」のナンバーを連発して幕開け。真彩とのコンビで、「ファントム」から「Home」も歌い、圧巻デュエットも再現した。

最後の大階段あいさつは、男役王道の黒えんび。望海は「卒業を決めたのは私自身」と切り出し「(コロナ禍で)どうなろうとも-と、覚悟をしていました」とも吐露した。昨年の前作東京公演中に続き、今公演中に2度目の緊急事態宣言もあった。それも乗り越え、39日間54公演を完走。「毎日、抱えきれない幸せをいただきました。全員で舞台に立てて、最高の幸せ」とスタッフにも感謝した。

その後「そして大切な…」と続け、言葉に詰まった。涙声になりながら「ファンの皆様…」と振り絞り「出会えてうれしかった。幸せです」。ファンとふれあう機会もなくなり、自身もファン経験が長かった望海は「今はただ、皆様にお会いしたい。いつか一緒に笑い合える日がくる」。ファンを思い、再び声を震わせつつ「本日、私は、大好きな宝塚大劇場を卒業しますっ!」と声を張った。

最後は今作「fff」にちなみ、3本締めではなく「タタタタン締め」で締めた。相手娘役の真彩希帆らとともに、東京宝塚劇場千秋楽の4月11日をもって退団する。【村上久美子】

○…望海の相手娘役に迎えられ、添い遂げて退く真彩は「望海さんの隣にいられて幸せでした」とあらためて感謝。下級生の頃から組替えを多く経験し、その中で支えてくれたファンへの思いも込め「恵みの雨のように愛情をいただいて、育てていただいた。私はここで生まれました」。一方では、音楽学校の合格発表時を思い出したとも言い、原点からの巣立ちに「今日が最後…とは、正直、実感がわきません」と話した。

○…同期の前花組トップで女優の明日海りおは、本拠地を巣立った望海に「(東京宝塚劇場)千秋楽の日まで、舞台と、お客様との時間を味わい尽くしてほしい」とエールを送る。自身の経験から退団公演は多忙を極め、実感できたのは「最後の1週間ぐらい」。宝塚音楽学校の予科時代、ともに公演CDを聞き夢を語り合ってきた。「1日1日、1回1回にあふれている愛の量を味わって、思いっきりやってほしい」と、東京公演までの完走を願う。