世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭で最高賞の金熊賞を争うコンペティション部門に、濱口竜介監督(42)の新作映画「偶然と想像」の出品が決まった。11日、映画祭事務局が発表した。「偶然と想像」は、偶然と想像をテーマにした3話オムニバス映画で、濱口監督初の短編集。同監督は、18年に「寝ても覚めても」が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されており、世界3大映画祭のコンペ部門出品は2度目となる。

第2話「扉は開けたままで」では、渋川清彦(46)が50代にして芥川賞を受賞した大学教授・瀬川を演じる。甲斐翔真(23)演じる、瀬川に落第させられた男子学生・佐々木が、逆恨みから瀬川を陥れようと、森郁月(32)演じる同級の女子学生・奈緒に瀬川の研究室を訪ねさせる物語だ。

第1話「魔法(よりもっと不確か)」には、古川琴音(24)が主演する。古川演じるモデルの芽衣子が、玄理(34)演じる親友のヘアメイク・つぐみが「いま気になっている」と話題にした男が、中島歩(32)演じる2年前に別れた元カレの和明だと気づき、どうすべきか思案する物語だ。

第3話「もう一度」は、占部房子(43)演じる東京で働くシステムエンジニア夏子が、河井青葉(39)演じる、あやと仙台で20年ぶりに再会。あやは仙台在住のまま2児の母になっており、高校時代の思い出話に花が咲くが、会話は次第にすれ違ってゆく物語だ。

濱口監督は「偶然と想像」について「私自身にとっても実験的性格の強いプロジェクトだったのですが、それを一緒に面白がって参加してくれたキャストやスタッフの皆さんにこの場を借りて御礼を申し上げたいと思います」と説明。19年夏から約1年半をかけて製作。脚本も全て同監督自身が手掛けたが「1話ごとに時間を置いて制作したおかげで、各話十分な準備を経た上で撮影ができました。特に各話それぞれキャストの皆さんと長時間のリハーサルの時間を持てたことはとても贅沢なことで、結果としてどの撮影現場でもとても素晴らしい演技と出会えました」と撮影にも時間をかけたと語った。

その上で「また今回、特に『偶然』というテーマを採用したことによって、私自身が物語の行く先・発展に驚かされることが多くありました。今回の制作を通じて短編という形式や、偶然というテーマの面白さを再発見しました。『偶然と想像』は全7話のシリーズを予定しています」と、ベルリン映画祭コンペ部門に出品する3作品の先に、4作品を予定していると明かした。そして「このシリーズを自分の40代通じての仕事としたいと思っています」と、残り8年ある40代に鳥食う仕事だと明言した。

濱口監督には、公開待機作として作家・村上春樹氏(72)の14年の短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)に収められた短編を実写化した「ドライブ・マイ・カー」の公開が今夏、控えている。西島秀俊(49)が主演し、ヒロインを三浦透子(24)が演じ、霧島れいか(48)岡田将生(31)が出演する。