吉川英治文学賞など各賞が2日、発表され、NEWS加藤シゲアキ(33)の小説「オルタネート」が第42回吉川英治文学新人賞を受賞した。12年の作家デビューから初の文学賞受賞となった。第164回直木賞では候補入りも落選し、涙をのんでいた。作家として歩き始めてから10年目での栄誉に、喜びをかみしめた。

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都内で行われた会見で、加藤は「素直に驚いています。光栄な機会をいただいて、びっくりしつつも実感が湧いてきました」。緊張気味に笑みを浮かべた。

12年に「ピンクとグレー」で作家デビュー。同作の執筆はちょうど10年前で、節目の受賞となった。加藤は「東日本大震災があって、自分としても強烈な時間だった。10年やめずにきたこと、10年前の自分をほめてあげたいです」。一方でコンプレックスがあったことも口にし「一般的な作家は新人賞で作家生活がスタートする。横入りした気分だったので、文学界が温かく迎えてくれたことがうれしかった。新人賞をいただいたことで恩返しできたかな。ここからがスタートだと思っています」と表情を引き締めた。

受賞を知らせたい人に故ジャニー喜多川氏、藤島ジュリー社長を挙げ、ジャニー氏について「物語は作ることができるということを、僕の前で体現した初めての人」。小説執筆はジュリー氏の勧めだったとし「2人のおかげで作家活動が始まった」と感謝した。

選考委員の重松清氏は選評で「のびしろが高く評価された」と語った。加藤は「のびしろという言葉は新人にしか言ってもらえない。緊張感を持って作家活動をスタートさせないとと、ワクワクと同時に恐ろしく感じています」。落選した直木賞の選評を読み、ありがたさと同時に発奮する気持ちもあったという。今回は群像劇に挑戦したが、次作については「1人の主人公の深いところ、触れたくても触れられないようなテーマを頑張って掘り下げてみたい」と意欲を見せた。

武田綾乃さん(28)の「愛されなくても別に」も同時受賞した。

◆加藤(かとう)シゲアキ 1987年(昭62)7月11日、大阪府生まれ。青学大卒。99年4月ジャニーズ事務所入り。04年5月NEWSとしてデビュー。小説家として12年1月「ピンクとグレー」を発表。著作に「閃光スクランブル」「チュベローズで待ってる(AGE22・AGE32)」などがある。175センチ、血液型A。

◆「オルタネート」 高校生限定のマッチングアプリが必須となった世界の群像劇。料理部部長の蓉(いるる)、オルタネートを信奉する凪津(なづ)、高校を中退した尚志(なおし)の3人を中心に、若者の苦悩や恋愛、成長を描く。

◆吉川英治文学新人賞 作家吉川英治の偉業を記念して設立され、第1回は1980年(昭55)。選考は年1回、3月上旬に実施。大衆文学が対象となる。同時に「吉川英治文学賞」「吉川英治文化賞」「吉川英治文庫賞」も選考される。これまで北方謙三氏、伊集院静氏、宮部みゆき氏、浅田次郎氏、馳星周氏、伊坂幸太郎氏、恩田陸氏らが受賞。