米ジョージア州アトランタ周辺で16日にマッサージ店3カ所が銃撃され、アジア系女性6人を含む8人が死亡した事件を受け、ハリウッドのアジア系俳優たちがアジア人への憎悪を止めるようSNSで呼びかけている。米CNNなどによると、逮捕されたロバート・アーロン・ロング容疑者(21)は「すごくついてない日だったから」などと話し、動機は自身の性依存症であり、アジア系住民に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)ではないと否定しているというが、コロナ禍で急増するアジア人に対する差別や憎悪が殺害動機になった可能性も払拭(ふっしょく)できないことから、全米のアジア系住民の間で衝撃が走っている。

映画「ザ・プレデター」(2018年)や「X-MEN:アポカリプス」(16年)などで知られる女優オリヴィア・マンやドラマ「LOST」や「HAWAII FIVE-0」などで活躍する韓国系俳優ダニエル・デイ・キム、香港の俳優ダニエル・ウーらが、SNSで「#StopAsianHate」のハッシュタグを使ってアジア人へのヘイトクライムを止めるよう支援を求めている。事件を受けマンは、「アジア人に対する暴力的な攻撃や殺人はいまだ行われている。どうか私たちを助けてください。私たちの国で安全に暮らすための手助けが必要です」とツイート。「スター・トレック」シリーズのヒカル・スールーで知られる日系2世の俳優ジョージ・タケイも、「特にあなた自身がアジア人ではない人たちができる最善のことは、この国のアジア人に対する暴力に反対の声を上げることです」とツイートし、アジア系米国人への支援を呼び掛けている。また、ドラマ「エミリー、パリに行く」に出演している韓国系のアシュレイ・パークもアジア人に対するヘイトクライムや差別に苦しむ心境を涙ながらに語る動画を公開している。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年3月以降、コロナ禍のスケープゴートとしてアジア人を標的にした差別や犯罪が急増しており、米バラエティ誌によると昨年3月以降、アジア系住民への差別撲滅を目指す非営利団体「Stop AAPI Hate」には3800件もの被害報告が寄せられているという。アジア人を狙った犯罪は昨年は前年比で150%増で、今年に入ってからもロサンゼルスのリトルトーキョーにある東本願寺が放火される事件が起こるなど2カ月で500件を超える事案が報告されている。新型コロナウイルスを「中国ウイルス」などとトランプ前大統領が呼んでいたことなども差別を助長する要因になっており、長引く自粛や経済活動の停滞にいら立つ人々がアジア系住民に憎悪の対象を向けるケースが増えていると言われている。13日にはロサンゼルスの日本人街で、1000人を超えるアジア系住民による大規模な抗議集会が行われたばかりだった。(ロサンゼルス=千歳香奈子)